雨谷の庵

[0440] 秘密のページをめくって (2004/06/19)


[Home]
秘密の蜜は甘い味。

誰にでも秘密はあるものだ。
そう、例えばこの何の変哲も無いおっさんであるところの私にだって秘密はある。
つい先日など、30も越えたこの歳になっておねしょをしてしまったなどとは口が裂けても
公表できない恐ろしい秘密である。
もちろん妻の人にも内緒だ。誰にも知られるわけにはいかない。

しかし時として、人は誰かの秘密を垣間見てしまう。
そんな瞬間が、人生の中のちょっとした空き時間に忍び込んでくる。
突発的な事故にでも例えるべきだろうか。
それを避けることは難しく、そして出会ってしまった時には既に何もかもが手遅れなのだ。
誰にでも起こり得る出来事、しかし普段、人々は己の意識からそれを追い出し続けている。
嗚呼、秘密よ秘密。秘密さんよ。
お前は何故にそれほどまでに遠く、しかしあまりにも身近なのか。

そして今、私の目の前に秘密が落ちている。
私の自宅の何の変哲も無い風景の中に、その秘密はぽつんと鎮座していたのだ。
私にはその秘密に見覚えが無かった。
だから、それは恐らく妻の人の秘密なのであろう。
しかしである。
これほど妻の人に似つかわしくない秘密が存在しても良いのだろうか。
しばし、私はその秘密を前に呆然とする他無かった。

古来より、妻という存在は秘密の宝庫であった。
いや、もちろんそこには個人差というものがあり、そして夫婦仲の強弱による様々な縞模様が
存在し得るであろうことはここで改めて言及するまでもないだろう。
ただ、少なくとも夫という存在が男性であり、妻という存在が女性であるというその根本的な
前提条件ゆえに、そこに相互が決して乗り越え得ない精神的な深い溝のようなものが横たわって
いるということは、誰しもが肯定する一つの認識ではないだろうか。
つまり、夫にとって妻とは最も身近な未知なる秘境であり、そして永遠に謎めいた存在であると
言っても過言ではないのだ。

OK。要するに、私の愛する妻の人にも秘密があったということだ。
そしてそれは何ら不思議なことではなく、単に私がそこから無意識的に目を逸らし続けていた、
それだけの話なのである。
私は意を決して秘密を手に取ってみた。
重さは約180g 程だろうか。
それほど重いというわけではない。深刻な秘密では無いようだ。
私はその秘密の手応えを確認すると、恐る恐るその秘密のページをめくってみた。
溢れる女体、踊り狂う乳房、そしてほとばしる汁、汁、汁。
それはどう見てもエロ漫画であった。

『青春ビンタ!』現在5巻まで好評発売中。
高校生活、それは性欲の有り余る青い時代。主人公ことビンタは毎日毎日自慰行為に耽る、
平凡な男子高校生である。この物語は、ビンタに想いを寄せる巨乳幼馴染のアミちゃんや、
貧乳ながらもロリっ気溢れるモモカちゃん、そして異常な性欲に日々乳を揺らし続ける
ネネ先生などと、ビンタが繰り広げるちょっぴりエッチな学園コメディである。
いつしか私は時が経つのも忘れ、食い入るようにその漫画を読んでいた。

読み終わってから、私は頭を抱えた。
何故、妻の人がこんな漫画を持っているのだろうか。
私が持っているのなら分かる。私はエロ漫画が大好きだ。
しかし妻の人は、エロ漫画に特に興味を示すような人物ではない。
いや、もしかするとそれは単に私の思い込みだったのではないか?
私がどれだけ、妻の人のことを知っているというのだろうか。
もしかすると、妻の人は物凄いエッチの持ち主なのかも知れないではないか。
嗚呼、どうして今まで気づかなかったのだろう。
私は私の自分勝手なイメージで、妻の人を清純で清楚な女性だと決め付けていたのだ。
本当の妻の人は、エロエロでグチョグチョで汁、汁、汁がびょむびょむな女性だったのだ。
何ということだ。
そうと分かっていれば、私は最初からもっと違った形で妻の人との時間を過ごしていただろう。
いや、今からでも遅くはない。
私にも妻の人にも、これからの人生をエロエロでグチョグチョで汁、汁、汁がびょむびょむな
風景に染め上げていくだけの時間的余裕は十分に有るではないか。
過去の過ちは惜しみなく悔い改め、速やかに修正すれば良いだけの事である。
善は急げ。私は今をもって吉日と為し、迅速なる行動力でもって妻の人に飛びかかるのであった。
さあ妻の人よ。
今こそエロエロでグチョグチョで汁、汁、汁がびょむびょむなその秘密の本性を我の前にっ!

しかし妻の人は、そんないきり立った私に冷静な軽いチョップを食らわした後、静かな口調で
「その漫画はね……」と切り出すのであった。

私屋カヲル。元少女漫画家。女性。
『少年三白眼』など、少女漫画雑誌としては異色の作品で人気を得る。
現在、少年誌にて『青春ビンタ!』を連載中。
コミックス版の表紙などに描かれたスタッフ日記四コマは必見。
徐々にエロを描き慣れてしまっていく女性アシさん達萌え。
妻の人が、好きな作家の一人である。

雨谷の庵は今日も雨。
< Back |List| Next >
管理者:徳田雨窓