雨谷の庵

[0377] 城は騙し絵で出来ている (2003/10/12)


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新婚間抜けドイツ紀行その8。

何度も書くようで申し訳ないのだが、この旅行で一番間抜けなのは私であり妻の人が間抜けな
わけでもドイツが間抜けなわけでもなく、この私の間抜けさ加減を笑って欲しいという非常に
自虐的な行動原理によって紀行文が書かれていることをまずは再確認頂こうと思う次第である。
どれくらい私が間抜けかという証拠を示すならば、この一連の紀行文の中で私が再三記述に
及んでいるものの中に「フラスコ画」というものがあるわけであるが、実はこれは「フレスコ画」
と記述する方がより正確であるということを、読者諸賢のお一人様からご指摘頂いたことを
申し述べておくべきであろう。
指摘を受けて慌てて調べてみるとこのフレスコ画、語源としてはイタリア語で「新鮮な」という
意味の「fresco」であるとのことで、これはどう考えても「フラスコ」にはならんということが
判明した次第である。英語ならfreshだろうか。
ここに謹んで訂正するとともに、ご指摘頂いたことに感謝したいと思います。
とりあえず、すでに書いちゃったものについてはここでネタにすることもあって、そのままに
しておく方向で。いや、修正してもいいんですが。めんどくさいし。<おいおい。

で、このフレスコ画、描画技法の一つなわけであるが、なぜフレスコと呼ばれるかといえば、
「描かれてから長期間に渡って色鮮やかであるから」とか「生乾きの壁に直接描くから」とか
いう説があるようである。
ちなみにこのフレスコ画、乾燥していない漆喰の壁に水で溶いた顔料を直接塗っていき、壁が
乾燥すると同時に色が表面に定着するので、塗りたての発色と明るい色彩を保つのだそうだ。
その分、一度描くと壁そのものと一体化しているために修正が困難で、絵師にとっては一発
勝負の大仕事でもあったらしい。
今回の旅行で目にした主なフレスコ画は、ヴュルツブルクのレジデンツ、バンベルクの新宮殿の
ものであるが、そのほかにもローテンブルクやフュッセンの街の家々の壁に描かれたものや
フュッセンのホーエス城の外壁の飾り絵などもフレスコ画であったような気がしないではない。
まあ、雨ざらしの外壁のそれは違うかも知れない。

ところでバイエルン地方の天井画などで特徴的だなぁと私が感じたのは、その騙し絵の数の
多さだろうか。
以下、ちょっと個別に書いておこう。

○ヴュルツブルクのレストラン
ヴュルツブルクでの昼食に利用したレストラン(前日の晩に、私たちが行き損ねたあれ)は、
地下に広間のような場所があり、その壁には擬似立体の壁画が描かれていた。
どうやら屋外の広場をイメージしたモノのようで、木の囲いや蔦などが克明に描かれている。
ここに限らず、私たちがバイエルンで利用したレストランのほとんどは、室内に屋外を演出
していたような気がしないではない。
そういえば私たちが結婚式を挙げたフランス料理屋でも、会場のことを「ガーデン」と呼んで
おり、周囲は欧州の中庭をイメージした装飾にしてあったから、欧州ではそういう屋外での
食事というイメージ作りが流行っているのかも知れない。

○バンベルクの新宮殿
ここの天井画は騙し絵天国である。
何しろ、天井の高さはそれほどでもないにもかかわらず、その天井の絵を上手い具合の角度
から眺めると、その天井画として描かれた柱が実際の柱のように見えて、天井の高さが
底上げされると言う仕組みになっているのだ。
実際の天井の位置を第一階層とすると、天井画として第二階層、第三階層が描かれており、
上手いこと写真を撮るとえらく豪華なホールであるかのように見えるのである。
実際、新宮殿の入場チケットにはそんな上手い具合の写真が使われており「こんなところ
見たっけか?」とあとでよくよく考えてみればそれは騙し絵の天井のそれであることに
気づくのである。
まあ、騙される私が間抜けなだけかも知れないが。

○フュッセンのホーエス城
この城は騙し絵で出来ていると言っても過言ではない。
実際の壁はのっぺりとした飾りの一切無い壁なのであるが、そこを騙し絵が埋め尽くして
いるのである。
まず、塔の四隅には黄色と赤のレンガが組み込まれているように見えるのだが騙し絵である。
窓の周囲には飾りの出窓があるかと思えば、それは騙し絵である。
実は城だけでなくフュッセンの街自体が騙し絵の宝庫で、一般の住宅の窓枠も実は騙し絵で
あったりとかして、歩いていて街並みの立派さに下手に感心しているとそれが全部騙し絵の
なせる技であったりとかするから油断も隙も無い。

○ヴュルツブルクのレジデンツ
ここの天井画の騙し絵は、バンベルクの新宮殿やホーエス城のそれのように見栄えを騙し絵で
よりよく見せようという貧乏臭いものではなく、下から見上げてよりリアルな外観に
仕立てようという工夫の賜物のようであった。
例えば、部屋の隅に描かれている騎士の絵が、現実の窓枠に腰掛けているように見えるように
工夫してあったり、描かれている人物の一部が実際の布キレで補完されていたりと、そういう
技法が駆使されているという感じである。

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とまあ、こうして書き上げてみるとなんだか「ドイツって騙すの大好きっ」という微妙な
感想を抱きかねない気もしないでは無いが、それは多分気のせいなので気にしない方向で。
それに多分次回書くことになるだろうノイシュヴァンシュタイン城の装飾は、騙しの一切
無い実に豪華絢爛たるものであったので、騙し絵ばかりがドイツではないということで。
とりあえず今日はこの辺で。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓