雨谷の庵

[0364] 彼らが笑顔を絶やさない (2003/08/14)


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言ってみれば、今の私はセミの抜け殻。

君にとって結婚式とは何であるかと聞かれれば、それは打ち合わせのことだと答えてしまおう。
それほどまでに、結婚式を挙げるということは年がら年中、何かしらの打ち合わせをすると
いうことに等しいと、思うようになった徳田31歳の夏である。
この夏を謳歌するセミどもが実は、幾年もの期間を土の中でもごもごと過ごしているのと同様に、
結婚式という一見華々しい世界を演出するまでのその前準備には、何ヶ月もの潜伏期間というか、
関係者各位による地道な折衝活動が行われているのであるということを覚えておいて欲しい。
いや、覚えていても別にどうということはないので、実はどっちでもいいのだが。

以上のような愚痴を言いたくなる程に、結婚式の準備に打ち合わせは満ち満ちている。
私が覚えているだけでも、ウェディングドレス選択の打ち合わせ、新郎の衣装の打ち合わせ、
式場の大きさの打ち合わせ、ウェディングケーキの打ち合わせ、食事のメニューの打ち合わせ、
写真の枚数の打ち合わせ、和装写真の打ち合わせ、花の色の打ち合わせ、式次第の打ち合わせ、
挙式方式の打ち合わせ、ヘアメイクの打ち合わせ、司会者との打ち合わせ、ウェディングドレスの
装飾品の打ち合わせ、BGMの打ち合わせ、料理の細かな注文に関する打ち合わせなどなど他にも
きっと色々あったような気もしないではないが、もう済んだことはどうでもいい話かも
しれないので、ここらへんのところで勘弁しておこうとかそういう思いで一杯である。
そもそも、コレだけ書き並べても読者諸賢にはぴんとこないばかりか、字面の読み辛さに
うんざりぶっこいてしまいかねないとも思うので、ここは一つ書き手としての慮りの心とか
いう奴を十二分に発揮するべしと一念する次第でもある。

つい先日もウェディングドレスの寸法合わせの最終確認に赴いたばかりである。
ちなみにウェディングドレスは花嫁の華奢なラインに合わせて限界までウエストを絞りまくった
結果、お胸の辺りがアリエナイまでに強調されてしまうというとんでも無いことになって
しまった。中身はスカスカだそうです。勘違いしないように。<誰が?

まあ、それはともかく。
既にご納得頂けたこととは思うが、このように結婚式とはつまり打ち合わせのことであるのだが、
その打ち合わせの最中に一つ、気づいたことがある。
それはどうも、打ち合わせの相手というか、我々の結婚式の各種担当者なのであるが、彼らが皆、
一様に笑顔に満ち満ちているということである。
いやもちろん、結婚式というのは実に目出度いものとして祝う類の場面であるからして、その
結婚式の担当者である彼らが笑顔を絶やさないというのは、接客業としては当然至極とも
言える訳ではあるが、それにしても我々に対して彼らが向けている笑顔のそれは、少々常軌を
逸しているのではないかと思えるほどの笑顔っぷりであるのではないかという疑念が、
私の心のどっかそこらへんにふつふつと沸いてきてしまっているのである。

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例えば、ウェディングケーキの打ち合わせの時のことである。

 担当「あ、そうだ。ケーキの上にピエスモンテを載せるという手もありますよ」
 徳田「ぴーすもんた?平和な文太くんってことですか?」
 担当「あはは。違いますよ。お砂糖で作る、お人形のことです」

そんな受け答えをしている横で、彼女の人がもきもきとそのピエスモンテとやらのデザインを
落書きし始めていた。
ケーキの発注書に描かれたリスの絵を見た担当者の人は「す、ステキですねー」とお上手を
言っていたが、その目がゲラゲラと笑っていたことを私は知っている。

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例えば、司会者の人との打ち合わせの時のことである。

 司会「で、お二人の出会いの時の印象についてお聞かせ願いますか?」
 徳田「…ええと、そりゃあもう、可愛らしい人だなぁと…」
 彼女「嘘をいうなー。酔っ払って覚えてなかった癖にー」
 司会「はぁ?」
 徳田「え、ええ、まあ、そうですね…」
 司会「覚えてなかったのに、付き合い始めたのですか?」
 彼女「そうです」
 徳田「そうなります」

ショボーンと肩を落とした私の姿に笑いながら、司会者の人は続けた。

 司会「一つ分かったことがあります」
 徳田「はあ、なんでしょう?」
 司会「新郎さんはどうやら自虐系というか、そういう笑いの取り方をされる人ですね」

思い当たる節が有り過ぎるだけに、二の句が継げなかった。

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例えば、料理の細かな点に関する打ち合わせの時のことである。

 料理長「いやぁ、私もお二人にお会いするのを楽しみにしていたのですよ」

物凄い笑顔で現れた料理長は、一枚の紙を我々の前に取り出した。
それは料理の試食会の時に我々が書いたアンケートの紙で、その余白という余白が、どっかで
見たことのあるリスの落書きで埋め尽くされていた。

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例えば、挙式の方式に関する打ち合わせの時のことである。

 担当「いつも明るく楽しいお二人には、こちらの明るい感じの挙式がお勧めですよ」

妙にその「明るい感じの挙式」をお勧めしてくるので、その理由を問いただしたところ、
「お二人の会話はいつも漫才みたいで面白いから」という回答が返ってきた。

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例えば、お花の色の打ち合わせの時のことである。
一通りの打ち合わせが済んだ後、お花の担当者の人が最後にこう付け加えた。

 担当「お話には聞いていましたが、本当に漫才みたいですねー」

誰だそんな妙な噂を広めている奴は。

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結論:我々の打ち合わせは、何故か笑われている。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓