雨谷の庵

[0360] 共通認識が記号化され混入され (2003/07/18)


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万物は流転する。

言葉というものは変化流転するものであるというのは今やと言わず、昔からの常識的な事実認識の
一つに過ぎないわけであるが、その変化流転の様を研究している人々の間では、変化流転の速度と
いうか変異頻度というか、そういうものは実は大集団的な系では遅く、小集団的な系では速いと
いう傾向があるとのコトである。
まあこれは少し考えてみれば容易に分かることであるが、ある変異によって生成された単語が
集団の中で特定の意味を付与され、それが全体に認知されるまでにはその単語が伝達されるまでの
時間と、その意味が固定されるまでの時間の二つが必要とされるわけで、広く素早く情報を
ばら撒く何らかの仕組みでもない限り、大集団よりは小集団の方がその変異の固定化に掛かる
総体的な時間が比較的短くて済むであろうというのは道理ではなかろうか。
もちろん、現代社会ではマスメディアなりインターネットといったばら撒きシステムが整備されて
いることもあり、大集団の中での言語変異も加速される傾向にあるとは言えるだろうが、
しかしながらそうは言っても家族であるとかクラスの仲良し集団であるとか、そういったかなり
限定的に区分された小集団での言語変異の速度は、国民全体のそれに比べればかなりのものに
なっているのではないかとも思う次第である。

と、ここまでぐだぐだと珍説を振り回しているのは、単に新手の惚気の前振りに過ぎないだけ
なので、油断が禁物とかそういうことである。
では始めよう。

前回書いた件で、我々二人の携帯メールの内容をネットに晒してみた訳だが、それに対して
「意味が半分も分からんぞゴルァ」(超意訳)というご感想を頂いたので、ちょっとだけ
解説してみようかと思っている次第である。
まあ、言ってみればあの内容と言うか表現の端々と言うか、そういうものは我々二人という、
これまた非常に限定された会話空間の中で変異させてきた言語によって語られているわけで、
それは日本語という基盤を戴きながらも様々な二人だけの共通認識が記号化され混入された
独自の伝達様式に他ならないわけで、強いてそれを名づけるならば「徳田と彼女のラブ言語」と
でもしなければ私が納得しないという恐るべき状況なわけで、こんなふざけた惚気を読むことを
強いられている読者の皆々様には大変に申し訳ないと思っている次第ではあるのだ。
今回は、そんなラブ言語の意味を逐一解釈していくことで、我々のラブラブっぷりの思考形態を
とくとくと語り込もうという言わば高度に自己中心的かつ不遜な試みに他ならないので、
そこのところを予めご了承頂いた上で先に進んで頂きたく思う。
読むのを止めるなら今のうちだぞという意味でもある。

○「でぱでぱ」「でぱつにょー」

「出発」のことである。これは彼女の人の父の人が、何故か「出発」を「しゅっぱつ」ではなく
「でっぱつ」と読むことから、派生した言葉である。
携帯メールはその入力が面倒くさいことから、まずはこれが「でぱつ」と短縮された。
そのうちその変化形である「でぱでぱ」「でぱー」「でぱぱん」などが現れて今日に至っている。
これらに「にょ」「にゅ」などの無意味な接尾語を付けると「でぱつにょ」などの言葉になる。
ちなみにこの「出発」系の単語は、出勤時に自宅を出た時だけに主に用いられ、他の場面では
滅多に使用されない。
どこかに遊びに行く際に家を出るときなどはきちんと「家を出ました」となったりする。謎だ。

○「ばすおり」

「バスを降りました」の意。かなり短縮されているのは、バスを降りるタイミングで連絡を
入れなければならない場面が多いことを物語っている。
まあ、毎日最寄り駅で待ち合わせをしていればそうなるだろう。
ちなみに私は滅多にバスに乗らない上に、待ち合わせの前に乗ることはほとんど有り得ないので
この単語はあまり使わない。

○「らじゃ」

通信内容を理解した(received and understood)ことを相手に知らせるための英語「Roger」の
日本読みである「ラジャー」の簡略表現。DragonRajaとは無関係。
元々は「received and understood」の頭文字である「R」のphonetic alphabet(一文字づつを
伝える時の標準単語。「上田です。ウエは上野の上、タは田中の田」の上野とか田中のような
使われ方をする単語のこと)だったらしい。
主に私の方だけがこの「らじゃ」という言葉を使う。彼女の人は主に「ういうい」という
単語を使う。

○「もれは今日も大繁盛だもらぁ」「もれぽは今日も大暇人だもるぁ」

「もれ」および「もれぽ」は、「私」という意味の2ch語。最近の私は通常会話でも使っている。
変化形には他に、「もれっぽ」「もれっぽもれっぽ」などもある。
相手を指す場合には「もまい」という単語を使うこともあるが、二人だけの会話では二人称を
使う場面はほとんど無いので見かけない。
「もらぁ」「もるぁ」は「ゴルァ」という2ch語の変化形。「ゴルァ」自体にあまり意味は無いが、
語感に怒りや強さを付加したい時に使うことが多い。ただ、「もらぁ」だと「ゴルァ」よりは
語勢が弱まるという、微妙な共通認識もあることは確か。

○「しみつ♪」

「秘密」の変化形。ただ、「ひ→し」という変化はこの単語だけで他にはあまり無い。
「電波→でむぱ」という「ん→む」変化や、「です→れす」という「で→れ」変化は
結構あちこちで見かけるのだが。
こういう、音の変化の法則は良くわからない。分からないので私の方から、こういう変化形の
単語が発生することは無い。

○「あう♪」

言葉につまったときに漏らす呻き声。「あう」は、ちょっと困った感じの意味合いを持つ。
我々二人の言語体系には、他にも色々な擬音語が用意されている。
「うあ」→戸惑い。ちょっとだけ困っている感じも内包している
「うい」→フランス語の「ウィ」からyesの意
「うお」→吃驚仰天
「むお」→予想外に嬉しいことがあった時の叫び
「むい」→軽いうなずきの言葉。同意の意
「むいむい」→「分かってるよー」という主張
「むいむーい」→「んじゃねー」という意味。電話を切るとき、最後にこれが発せられる
「むう」→考え込んでいる場合の呻き声
「むうむう」→不満たらたら
「むー」→納得いかないさま
「みゅ」「にゅ」→同意に近い意味があるが、言うべきことが無い場合にはこの音が発せられる
「みゅ?」「にゅ?」→聞き返し。相手の詳しい説明を要求している
「みゅー」「にゅー」→寂しいということを密かに主張
「もきー」→怒っている
「もひー」→怒っているが、ちょっと疲れている
「もきゅー」→落ち込んでいる
「もきゅきゅ」→元気になった
「もきゅ?」→きょとんとしているさま
「もふ」→満足げです
「もふー」→大満足
「もいもい」→「そうだね」の意。会話における相槌
「もいもい?」→「そうなの?」という問いかけ。同じく会話の相槌
ちなみに、「びゅびゅびゅびゅびゅ」は通常、あまり使われない。
あれは雑文の中だけの虚構の言語系である。

○「母さん、三時のきうけいをまだとれていません」

「きうけい」は「休憩」の発音変化。「きゅう→きう」「ぎゅう→ぎう」「しゅう→しう」
「ちゅう→ちう」「にゅう→にう」「びゅう→びう」といった変化は彼女の人の定番。
この法則からすると「牛乳→ぎうにう」「おニュー→おにう」「びゅうびゅう→びうびう」
「集中→しうちう」となるのだが、実際本当にそう書き送ってくるので侮れない。
また、通常会話でもこの変化発音は多用されるので、慣れるまでは意味不明の事もある。
なお、文章の冒頭の「母さん」は、一時期流行った「母さん」に呼びかける形で不平を
漏らすという様式で、いまだに我々の間では良く使っている。

○「そろそろあがるよ」「そろそろあがるのだー」

「あがる」というのは「仕事を終える」の意味で一般的に使われているそれ。
「そろそろあがるよ」というのは、仕事の終了時間を相手に知らせることで、帰りの合流を
スムーズにしようという意図でしばしば書き送られる定形文である。

○「もれだしーつ」「だしつ」

「だしつ」「だしーつ」は「脱出」の変化形。元々は「だっしゅつ」が「しゅつ→しつ」という
変化を起こして「だっしつ」となり、それが2chでよく見られる「けっこん→けこーん」型の
変化によって「だしーつ」となった。「だしつ」はそれをさらに縮めたもの。

○「もつかれ」

「お疲れ」の意。もつを煮込んだ「もつカレー」とは違うので注意。
ということで、私もそろそろ疲れてきたし、これを読んでいる読者諸賢もそろそろうんざり
してきている頃だろうと思うので、ここらで筆を止めておこうと思う次第である。

もつかれー。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓