雨谷の庵

[0341] 壁の模様や外壁の色 (2003/04/16)


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紫が一番のお気に入りだそうですが、それはさすがに遠慮したそうです。

十人十色という諺があったりもするわけだが、人の色彩に対する好みというものについてそれが
全くの文字通りに当てはまるのは言ってしまえば当然な出来事であり、世の中には様々に緑色が
好きだったり、赤色をこよなく愛していたり、黄色に囲まれて薄ら笑いを浮かべていたり、
真っ黒でなければ落ち着かなかったり、白くなければいやんいやんと泣き叫んでみたりとまあ、
なんとも多彩な有様であろうかと、思わず感嘆せずにはいられないような今日この頃である。
ちなみに、何故ゆえにこうした色彩に対する嗜好が生じるのであろうかという、至極素朴な
疑問についての明解な答えというものは未だ寡聞にして耳にしたことがなかったりも
する訳ではあるが、個人的に適当な思考回路でもってつらつらと考察するに、要するに
その人の過去の体験なりなんなりとその好みとは密接に関係していたりしていなかったりと
複雑なことになっているんだろうなぁとかお茶を濁すような形でえへらえへらと苦笑いを
してしまう他に術は無さそうなことに気づくのがせいぜいであったりするのだが、ここを
お読み頂いているであろう諸賢においてはいかがであろうか。

まあ、というわけで今回は色の好みに関連したお話である。

前回まででちまちまとネタにしてきたとおり、このたび私は新築の一戸建て住宅を新居として
購入する運びとなった。
少々、銀行の営業の人々や物件の紹介業者の人々の上手い口車に乗せられまくってという気も
しないではないが、いずれにしてもどこかに居を構えねばならないという前提は
変わらない訳で、そこら辺はまあ必要だから買ったのであるとこの際堂々と胸を張って
生きていこうと思ったりもしないではない。
ただ、当然の事ながら今までの人生では見たことも無いような金額の札束を目の当たりに
することになったり、しかもそれが全て自分の借金として今後背負っていかなければ
ならないという驚愕する他無い事実に頭を抱えてみたり、しかも更に目の前にある金額の
8倍以上もの金額を今後35年間に渡ってちまちまと返済していかねばならないことに
なってしまったという実感の重みに少々めまいを覚えてみたりもした訳であるが、
そこら辺のことはこの際、あまり気にしないでおくことにしよう。
取りあえず、これからは部長と喧嘩するときも命がけである。

ところでその新居であるが、始めから業者の人に建売モノであることを聞いていたので、
自分の好みで間取りを変えたりとかは出来ないのであろうと思い込んでいたのであるが、
間取りはともかく無理としても、前回も書いたが室内の壁の模様や外壁の色などについては
我々の要望を聞いてから取り掛かるとのことであった。
これは一つ、好きにさせてもらおうと思うではないか。
私は彼女の人と二人で、業者の人が持ち出したカタログに目を通し始めた。
とは言っても、むしろ熱心だったのは彼女の人の方である。
元々彼女の人は書籍を大量に読破することを日課としているような人物であるから、
カタログを眺めるその速度が尋常では無い。
ほとんど速読かなにかなのではなかろうかと思ってしまいそうなスピードで、次々とページを
めくってしまうので、私には全く手の出せない状況になってしまっていたりした。

ちなみに家の内壁の模様は壁紙を指定することで決定する。
一言に壁紙と言っても種類は様々で、耐水性のものや耐火性のもの、汚れ難いモノや
簡単な防音のものなどもあったりする。
中にはブラックライトで光る塗料で仕上げてあるものもあり、それらが
網羅されているカタログの分厚さは軽く電話帳を凌駕している程であった。
水周りの壁紙については耐水性のものにして欲しいと言われた他には、業者の人からの
注意点も特になく、値段も気にせずに選んで良いとのことだった。
家の外壁の仕上げ方には何種類かがあるそうなのだが、今回はその中の二種類が可能だと
いうことも教えて頂いた。
一つはモルタル仕上げで、これは塗料を外壁に塗るという言ってみれば普通の方法である。
もう一つはサイディングというもので、外壁にパネルを貼っていくものである。
モルタルは塗料の色を選ぶだけだが、サイディングはパネルの模様が千差万別で、レンガ調の
ものから石垣っぽいものなど多種多様な中から選ぶことが出来るようだ。
一般的にはサイディングの方がモルタルよりも丈夫で長持ちということのようだが、壁が
重くなるとか、パネルとパネルの継ぎ目が脆くなり易いなどのデメリットもあるようだった。

 彼女「もきゅ。漏れ、分かりますた」
 徳田「え?それはもう決まったってことですか?」
 彼女「三階の壁紙はコレとコレ。二階はこっち。一階の廊下と階段は二階と同じ」
 徳田「洗面所は耐水のじゃないとダメですよ」
 彼女「それも選んであるにょ。あと、御不浄は床がこっちで天井がこっち、壁はコレ」
 徳田「お。なんか変わったのを選びましたな」
 彼女「いや、漏れの計算ではこの組み合わせで落ち着いた雰囲気になるはずにょ」
 徳田「外壁はどうします?サイディングにしてみますか?」
 彼女「それはモルタルで。こっちの色推奨」

一通り、彼女の人の指差したものを見て回ると、私は一つの傾向に気がついた。
基本的には白っぽいものを選んでいるのであるが、どれも微妙に青っぽかったり緑っぽかったり
しているのである。黄色や赤は一切無い。
彼女の人の色の好みはどうやら、寒色系のようである。
そういえば、この前三つの物件を見て回ったときも、ピンク色の外壁の家(坂の上の家)に
対して物凄い拒否反応を示していたのであるが、あれは坂のきつさだけではなく、その色合いも
気に入らなかったとかそういうことだったのかも知れない。
そう考えると、色を事前に選べるというのは、我々二人にとって実は物凄く重要な
メリットであると言うべきだったのだろう。
ちなみに私はあまり色に好き嫌いは無いので、彼女の人の選んだものに異論は無かった。

 徳田「ところで、まだ一階の部屋の壁紙が決まってませんが」
 彼女「あのね、あのね……」

私の問に対して、彼女の人は急に甘えたような声でもじもじし始めた。
どうやら、何かを企んでいるらしい。

 彼女「漏れ、これにしようと思うのれす」

彼女が指差したその壁紙は、金と銀のススキ模様の入った純和風の壁紙だった。
どうやら我が家の一階は、私の知らないうちに、和室になることが決定されていた模様である。
……一応、フローリングなんですが。

(続く)

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓