雨谷の庵

[0327] 未来のネットゲーム (2003/01/24)


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私がネットゲームにはまっているのはここを時々にでもお読みの読者諸賢ならば先刻ご承知の
ことだと思う。
なので今日はそのネットゲームそのものの話題を取り扱ってみよう。
ヘルブレス限定だったりとか、アンチラグナロク論をぶちかましたりとか、そういうことは
一切無いので、そうした系統の話にはあまり興味が無いという方々にも少々足を止めて
お立ち寄り頂ければ幸いである。
なお、ここで取り上げているネットゲームというものは、いわゆる多人数同時接続型のRPGの
ようなものであることをご承知頂きたい。

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1.Webの後に続くものとしてのネットゲーム

私は、現在Webが担っているサービスの幾つかの部分については、今後ネットゲームがその
後継として機能するのでは無いかと考えている。
今、Webが担っていると私が考えているサービスには、以下のようなものがある。

 a. 情報の公開と参照(公共機関サイト、ニュースサイト、検索サイトなど)
 b. 企業の広告(企業サイト、バナー広告など)
 c. 情報交流(掲示板、チャット、ネットバトルなど)
 d. 個人の趣味(日記、CGなど)

このうちのa. についてはそもそものWebにとって意図されたものでもあり、今後もそれが
変わることは無いと考えて問題無いかと思う。
しかし、それ以外の機能についてはどうだろうか。
c. のサービスはWebの機能の拡張によって(もしくは社会性の向上によって)もたらされた
副次的な利用方法であるし、d. はWebという仕組みそのものを趣味の対象として見なし、
それをおもちゃに暇つぶしをしているに過ぎない。
b. に至っては、それがWebで行われ無ければならない理由などどこにも見当たらない。
広告というものは衆目が集る場所に掲げられるものだからだ。

b. c. d.のそれぞれはやがて、ネットゲームでのそれにほとんどがとって代わられることに
なるように思われてならない。
以下、個別に考察してみよう。

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2.広告スペースとしてのネットゲーム

ネットゲームは、広告スペースとして非常に有効な数々の特徴を備えていると私は思う。
例えば、ゲーム内でプレイヤーが頻繁に訪れるであろう場所(街の出口だとか、街道の交差点で
あるとか)に、企業の広告をCGとして設置することが出きるようになった場合を思い描いて
みて欲しい。
それはプレイヤーにとって、実に馴染みの風景となるだろう事は想像に難くない。
また、キャラクターのCGの一部(マントの柄であるとかヘルメットの模様であるとか)に、
企業名を自由に表示することが出来るようになれば、それはまた広告として機能するのでは
ないだろうか。
例えばゲーム内でとてつもなく強いキャラを育てたプレイヤーがいたとしよう。
そのプレイヤーが操るキャラクターの着ているマントに、燦然と「牛丼」という文字が
刻まれていれば、それは見る者に強烈なインパクトとなって記憶に刻まれるのではないだろうか。
企業は高レベルのキャラクターの装備に自社の名前を刻ませてもらうだけの為に、プレイヤー達に
広告料を支払うようになるかも知れないのだ。
更にこうした考えを推し進めれば、特定企業がスポンサーとなってゲームのためのサーバを
設置し、そのサーバ内のゲームフィールドをプロデュースするなどといった宣伝手法も容易に
思いつく。
そのフィールドでは全ての食糧が牛丼であったり、そのフィールドに流れる音楽は全て
その企業のコマーシャルソングであったり。
そんなゲーム空間がいかに恐るべき洗脳力を持つか、ネットゲームをやったことのある方なら
ご想像頂けることと思う。

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3.情報交流としてのネットゲーム

情報交流と書けば聞こえはいいが、現状のWebにおけるその最も発達した形は、2chに
代表されるようなもの、要するに雑談である。
中には有用な情報も存在するが、そのほとんどは冗談か悪ふざけ。
それが今のWebの大部分を占めているものではないだろうか。
チャットに至っては、飲み屋での馬鹿話以上の何物でも有り得ないと断言したいくらいである。
これはほぼ間違い無く、ネットゲームにその舞台を移すだろう。
現行の仕組みでは文字ベースでの情報交流しか行えない。
しかもそれは掲示板などでは非同期的で閲覧者ごとの時間差が大きく、冗談のタイミング的な
面白さ(ツッコミの勢いやボケの間合いなど)を大きく損なっていると言えるだろう。
2chなどの交流場所で、顔文字に代表されるようなアスキーアートが発達したり、一つの単語に
対して様々な言い換え・当て文字が為されたりするのも、そうしたテキストベースでの交流の
表現力の乏しさを補おうという努力の結果と思えなくも無い。
その点、ネットゲームの多くはキャラクターの行動というテキストベースでの交流には
無い表現力を元来から有している。
「むきー」と言いながら走り回ればそれは何らかの興奮状態を表していることが一目で見て
取れるし、「えーん」と言いながらうずくまればそれは何かしら悲しい目にあったのでは
ないかと思わずにはいられない。
他にもゲーム内のアイテムを贈り物として自身の感情を相手に伝えてみたり、誰かの危機に
対して助けに入るなどの行為でもって自身をアピールしてみたり、もっと直接的には相手を
完膚なきまでに叩きのめすことで対立を顕にしてみたりも可能なのだ。
もちろん、従来のWebでの情報交換の全てがこれらに置きかえられるというわけではないだろう。
しかし、雑談などのほとんどはゲームでのそれの方が表現力も豊かで面白いのだ。

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4.個人の趣味としてのネットゲーム

ゲームをするという事はもともと暇つぶしであるので、個人の趣味としての役割を果たすで
あろうことは明白ではある。
Webでの情報公開を趣味としている人々の中には創作的な嗜好の強い人もいるので、ゲームの
ような単なる暇つぶしでは満足してくれないという可能性も一応ある。
しかし、流行ものとしてWeb日記を始めた人や、他者との交流を欲して日々駄文を書き連ねて
いる人々にとっては、その対象がゲームであってもなんら問題無いのでは無いだろうか。
更にもしも、ゲームの中のフィールドやアイテムを、HTMLと同程度に簡易な手間暇で
創作出来るようになれば、創作嗜好の人々の一部もゲームのそれに惹かれるかも知れない。
ネットゲームの発展次第では、個人の暇つぶしを主に担当するのはWebではなくなるという
可能性は十分にあると考えて良いのではないだろうか。

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5.未来のネットゲームに求められるもの

さて、以上見てきたように現在Webで行われているサービスのほとんどはネットゲームのそれに
移行しても何ら不思議ではないと、私はここで改めて主張したい。
しかし、そうした現象が現実になるには幾つかの問題をクリアしなければならない事もまた
事実だろう。
そこで最後に、ネットゲームが今後ネットワーク利用の主流となるのに必要な事項を以下に
列挙して、締めくくりとしたい。

・ゲームフィールドやアイテム、キャラクター、モンスター等のデザインフォーマットの標準化

 これらは全て創作できねばならない。またそれは、HTMLやJPEGなどでWebサイトを
 構築出来るのと同程度に簡易でなければならない。
 デザインの公開には、従来のWebの仕組みを利用すれば良い。ゲームサーバはプレイヤーからの
 呼び出しに応じて適切なデザインをHTTPを経由して取得し、それを展開できれば良い。
 また、これらのフォーマットを作成するためのツールの開発も、オープンであれば更に良い。

・ゲームサーバの標準化

 ゲームサーバは、誰でも自由に設置出来ることが望ましい。もっと言えば、WebにおけるISPと
 同程度に、様々な業者が事業参入できればなお良い。
 個人の立ち上げたゲームサーバで小人数で楽しむのも良いし、特定企業がスポンサーとなった
 大規模フィールドを無料で楽しむのも良い。もちろん、ゲーム企業の有料スペースで再高品質の
 プレイを楽しむという従来の形態もまた良いだろう。

・ゲームクライアントの標準化

 ゲームクライアントの開発は、誰でも自由に行えることが望ましい。
 これは多くのプラットフォームへの移植も促すし、クライアントの使い勝手のカスタマイズを
 容易にするからだ。
 ただ、これは同時にクライアント間の非互換性を生んだり、BOT(自動プレイクライアント)の
 蔓延の原因となり得るが、そこは未来の人々の良識に委ねたい。

・ユーザ認証サービスの充実

 ネットゲームではそのセーブデータの管理が問題となるが、その根幹を為すのはユーザ認証で
 あると言って良いだろう。本来的には、ゲームサーバと認証サーバは別途のサービスで良い。
 現行の数々のネットゲームは認証サーバを自前で実装しているが、それは将来的には共通の
 認証機構に集約されるべきだろう。
 しかしこうした問題はプライバシー保護などの社会的な問題にも絡んでくるので、より
 注意深く実装されるべきではある。

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「ねぇねぇ、kasumiさんが新しい鎧をデザインしたんだって」
「へ〜。それって、例の牛丼屋プロデュースのサーバで公開されているのかな」
「うん。アイスさんのキャラが、もう装備してるらしいよ」
「うわぁ、それ、敵国人じゃん」
「見に行きたいけど、コロされちゃうかもね。問答無用で」
「まあいいや。取りあえずログイン……っと。お〜」
「なになに?どうしたの?」
「バレンタインセールの広告が街中に貼ってあるよ。まだ1月なのに気が早いなぁ」
「牛丼屋がバレンタインセールするの?ヘンなの」
「いや、そういうわけじゃないと思うけど。お前も来いよ。結構壮観だよ」
「う〜ん。実はね、私んとこの認証プロバイダ、今メンテナンス中で使えないの…」
「お前んとこのプロバイダ、良く落ちるよな。うちの奴に契約切り換えれば良いのに」
「でも、うちのプロバイダ、そっちのプロバイダへのデータ移行してくれないのよね」
「む〜。困ったプロバイダだなぁ」
「ね、取りあえず、スクリーンショット。撮っといてくれない?」
「了解。今夜中に、俺のWeb日記にアップしとくよ」

こういう会話が電話で交わされる日も、近いのかも知れない。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓