雨谷の庵

[0253] 苦悩の後に訪れる (2002/03/11)


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ちょっとだけ飲んじゃいました。えへ。

ニンゲンはもしかすると苦悩するために生まれて来たのではないだろうかと思うことも、
時にはあったりもする。
ちなみに私にとって、今がそんな時だったりするから世間というものは油断がならない。
いきなりに苦悩しているこの私の有様を目にしてしまった読者諸賢は、一体私が何に
苦悩しているのだろうということについて、おおよそ何らかの情報提供をお望みのことだろう。
よろしい。まずは状況説明から行なおうではないか。

日時は月曜日の朝である。
この月曜日の朝という時間は言うまでもなく、全国津々浦々のお父さんお母さんを
悩ませて止まない時間であることは明白であろう。
もちろんお父さんお母さんばかりでもなく、全国津々浦々の小さなお友達も中には
憂鬱な面持ちのままに学校なり保育園なり幼稚園なりに出て来ることもあるのだろうが、
彼等が悩んでいるのかどうかについては微妙に懐疑的にならざるを得ない。
何しろ、彼等の場合給食の時間になれば全ての悩みは消え去っているのではないかと
思わないではないからだ。ちなみに私が小さい頃はそんな感じであった。
それはともかく、今この月曜日の朝という時間の中で、私は苦悩しているのだということを
念頭に置いておいて頂ければ幸いである。

さて、今度は場所について詳しく解説しよう。
場所はもちろん、私の自宅の寝室である。
これがもし他人の自宅の寝室であれば、悩むだとか悩まないだとかといった些細な次元で
頭を抱えている場合ではなく、しかもその他人が女性であったりしたならばこの先の人生の
かなりの割合が決定されかねない重大事であり、いまここでこんなクダラナイ文章をのんびりと
綴っている場合ではないであろうことは明白である。
まあ私の場合、そんなことには当分なりそうにもないが。畜生。
それはともかく、今この月曜日の朝という時間の中で、この私の自宅の寝室において、
私は苦悩しているのだということを念頭に置いておいて頂ければ幸いである。

そして最後に、私を取り巻く状況について詳しく述べることにしよう。
私の居住する区域においては、月曜日の朝といえば缶や瓶をゴミとして収集する日として
定められている。
つまり我々住民は缶や瓶といったものを、この月曜日の朝でもって取りまとめ、所定の場所に
それらを配置しておかなければならないという訳である。
この月曜日という日にそうしたものを集めることにした行政の判断というものにはつくづく
感心せずにはおられない。
何故ならば、週末つまり土曜日日曜日というものは休日ということになっており、それは
私の場合即ちお酒を飲む機会が増えるとかそういうことを如実に物語ってしまっていたりする。
要するに、土日でゴミが大量に発生するのだ。缶や瓶の。
従って私はこの機会を最大限有効に利用し、現在寝室の床や机の上に転がっている缶や瓶を
収集し、所定の場所に廃棄するべき任を負っていると言っても過言ではない。
それはともかく、今この月曜日の朝という時間の中で、この私の自宅の寝室において、
私は大量の空き缶と空き瓶を目の前に、苦悩しているのだということを念頭に置いておいて
頂ければ幸いである。

いや、そうではない。
今現在、私の苦悩の原因となっているのはそれら空き缶や空き瓶なのではないのだ。
私を苦悩させているのは、空き缶や空き瓶しか捨ててはいけないという、つまりその住民として
至極真っ当に守るべき、ゴミ捨て時のルールにあると言えばより正確であろうか。
そう。ゴミとして捨てるには、まずもってそれらの缶や瓶を空にしなければならない。
しかし私の目の前にあるこの一升瓶、そこには何故かちょうどコップ1杯分程度の日本酒が
底の辺りに残っていたりするのである。
他のビール缶や一升瓶には、酒は残っていない。
只この、私の目の前にある瓶にのみ、日本酒が残っているのである。
私はこれを一体どうすれば良いというのだろうか。
私の頭の中で、様々な提案が浮かんでは消えていた。

○日本酒を流しに捨ててしまえ

 いかん。酒の一滴は血の一滴という諺を蔑ろにはできない。

○そのまま捨てずに置いとけばいいじゃん

 それでもいいが、この機会を逃せばあと一周間、この瓶を捨てることは出来なくなる。

○日本酒をこの場で飲んでしまえ

 正気か?このあとすぐ会社に行くんだぞ?

○だったら会社を休めばオッケー

 いかんいかん。もう、有休は残り少ないんだ。サボリ過ぎで。

○本当に風邪を引いてたら良いだろ?取りあえず体温を計って・・・

 それはもうやった。平熱だった。ちっ。

そうだ。
ここで私は、ようやく名案を思いつくに至った。
要するにお酒を無駄にすることなく、しかも瓶を捨てることが出来れば良いわけだ。
幸いにも残っているお酒はコップ1杯分。
これをコップに移し、瓶は捨てる。お酒は今晩にでも飲めば良いだろう。
おお、何という名案。何という英知。人類の知恵というものは決して馬鹿には出来ない。
私は早速コップにお酒を移すと、空になった瓶をゴミ袋に放り込んだ。
ああ、これで全ては解決だ。何の問題もない。
苦悩の後に訪れる、この清々しい開放感というものはいつでも人の心を浮き浮きとさせる。
ああ、こんなときにお酒を一杯ぐいっとあおったら、さぞかし美味しいだろうなぁ。
・・・って、何故かこんなところに上手い具合にお酒の入ったコップが一つっ!
うう、飲みたい。でも、これから会社だし。いやでもちょっとだけなら。いやいかん・・・。

なみなみとお酒の注がれたコップを両手で握り締めながら、
私の苦悩はまだまだ続くのであった。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓