雨谷の庵

[0236] 恐るべし緑あひる (2002/01/18)


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思い留まりました。

貴方は緑あひるというものを知っているであろうか?
緑あひるである。緑に、あひるなのである。
この一見妙な組合せの単語が実は、私の家では大問題となって目の前に横たわっているなどと、
一体何処のどいつが思いついたりするであろうか。いや、そんな奴はいない。反語。
もちろん、緑あひるというのは鳥類の一種を表すための単語ではない。
あひるという部分からそのような発想に至るであろうことは私も十分に承知しているところの
ものの一つではあるが、それはいかにも安易過ぎる発想と断ぜねばならぬところである。
そもそも緑という色ほど、あひるに似合わぬ物も無いであろう。
想像して見て欲しい。
緑色をしたあひるがガァガァと喚きながら池などをバチャバチャと無様に泳いでいる様などを。
どうであろうか。
その光景がちょっとばかり異様な雰囲気でもって眼前に押し寄せて来はしないだろうか。
ちなみに私が初めてこの緑あひるなる単語を耳にしたとき、安易にも上記のような風景に
取り囲まれてしまって腰を抜かしそうになったというのは誰にも明かせない内緒である。
なら書くなよ。

それはともかく。
何を隠そう、というか冒頭では意味深に隠しまくってしまっているわけではあるが、
この緑あひるというのは粉の商品名とかそういうものなのである。
粉である。粉なのだ。
つまりこの世の中には緑あひるとかいう一見何のことだかさっぱり皆目の見当のつかないような
名前を冠した粉が存在するとかそういう事なわけなのである。
そのネーミングのセンスには首を傾げる以外に私はこの心の内を表現する術を知らないが、
いずれにしても余人には計り知れない何らかの理由でもって、そのような名前が付いたとか
付かなかったとか、いやいや現にそう呼ばれたりしちゃっているんだけれども、まあなんとも
御愁傷様とか言い出しかねない勢いで現実というものはそういう仕組みに
なってしまっている様である。
なんとなく納得いかないが、まあ仕方が無い。耐え難きを耐えて欲しい。
取りあえずはこれぞ本当に「読み難いあひるの粉」だ、などというしょうもない駄洒落でもって
お開きにしてしまおう。

いやいや、まだお開きにするわけにはいかないのであった。
つまりはその、件の、掲題の、この緑あひるなる粉が、今現在現時点をもって我が家で大論争を
巻き起こしているとかそういうことなのである。
いや、誰も論争などしていないから単に話題となっているに過ぎないのではあるが、細かい事は
気にしないということは常々からのお約束とかそういうことである。
ともかく何故にこの緑あひるがそれほどまでに論じられているかというと、つまりそれは
我が家でうどんを手打ちしていることと非常に緊密なる関係性を持っていると言えるのである。
そう、つまりこの緑あひるはうどんを作るのに必要となる数少ない材料の中の一つで
あるところの、小麦粉の一種なのである。
そして問題はこの緑あひるなる小麦粉を使用した場合、うどんの味わいが一気に3倍にも
向上するとの噂が、まことしやかに存在するということである。
3倍である。誰が言い出したのかは分からないが、これは只ごとではない。
読者諸賢に是非試してみて欲しいのであるが、この緑あひるなる単語でネットを検索すると、
いくつもの様々な情報を入手することができる。
そのいちいちの情報がみな「緑あひるを使うだけでうどんが美味くなる」だの「緑あひる以外の
粉ではこうはいかない」だの「緑あひるこそ讃岐うどんのためにあるような粉だ」などといった
言葉で飾りつけられているのである。
恐るべし緑あひる。何物なのか緑あひる。いや、小麦粉なのではあるが。

ともかく、このような粉の存在を知った我々が落ち着いていられようはずも無い。
我が家の住人は私も含めて手打ちうどん狂信者、手打ちうどん無しでは明日をも知れぬ
命儚き存在なのである。
この粉を使うだけで美味さ3倍ともなれば当然、それを試したみたいと思うのが
人情というものであろう。
ところが。
この緑あひる、香川県は多度津町の日讃製粉という製粉メーカーが製造販売しているらしいので
あるが、どうやら一般の小売店では扱っていない物のようなのである。
困ったことに緑あひるは日讃製粉からうどん屋に直卸しているらしく、しかも一般からの
注文は一切受け付けていないようなのだ。
恐るべし日讃製粉。どこかのメーカーのパクリのような名前の分際のくせに侮れない。

緑あひるを使ってみたい。しかし一般人であるところの我々では入手すら出来ない。
このジレンマを解消するための手段はもう、うどん屋を始める以外にはないのであろうか。
そう思った我々は、うどん屋を開くということがどれくらいの現実性を持っているのかを
検討してみることにした。
まず、うどん屋のための店舗を借りなければならない。
この家賃を光熱費コミで、安めに見て30万円としよう。
店員は我々3人としてその人件費を、思いきり値切って一人頭月15万とする。
すると1ヶ月当りの必要経費は75万円となる。これを捻出するだけの利益を上げれば良い。
緑あひるは1kg当り200円である。
小麦粉1kgから、うどんは3kgでき、1玉200gとすると15玉分になる。
水と塩はまあ無視できるくらいであるとすると、1玉当りの原価は多めに見て15円だ。
もちろん我々は由緒正しきぶっかけうどん以外のものを販売する気は無いので、
卵であるとかワカメであるとかいった副食品は始めから眼中に無い。

ここでようやく1玉当りのお値段が問題になってくる。
香川で良くあるように1玉を100円とすると、1玉当りの利益は85円。
この場合、75万円を賄うには約9000玉、一日に直せば平均300玉を売り切れば良い。
営業時間を10:00〜20:00の10時間とすると、1時間当り30玉くらいのペースになる。
つまり、30分で小麦粉1kgを新しくうどんに打てばいいのか。
少し忙しいような気もしないではない。
今度は都内のうどん屋の平均より若干安い値段設定である1玉300円で計算してみよう。
1玉当りの利益は285円となり、月ベースで約2700玉、一日平均90玉が目安となる。
営業時間を同じとすると1時間当り9玉、2時間弱で小麦粉1kgのペースになる。
これはちょっと暇かも知れない。
となると、現実的な線は200円前後であろうか。
この不景気なご時勢、今や牛丼も280円とかいう値段でもあることだし、
ただのぶっかけうどんの値段としては200円が妥当かも知れない。
あとは設備や宣伝などの初期投資がどれくらいになるかだが・・・

と、ここまで考えて真剣にうどん屋を開くつもりになっている自分に気づくのであった。
いかんいかん危ない危ない。
明日にでも部長に辞表を叩きつけかねないところであった。
そんなことをすればすぐさまに日本の失業率上昇に寄与すること間違いなしである。
恐るべし緑あひる。皆も気をつけろ。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓