雨谷の庵

[0186] マッチョ売りの少女 (2001/09/18)


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むかしむかし、マッチョ売りの少女とかいう奴がいたとしたらどうであろうか。

か弱いとか可憐とかいう少女は数あれどマッチョな少女というのはあまり見ないという
気がしないでもないがそこはまあ気にせずに、とりあえずその少女はとにもかくにも
物凄いマッチョで、街でマッチョを売ることで大儲けだったりすることにしよう。
しんじられない程寒い冬の日でも、少女のマッチョは怖いくらいに熱気でむんむん
だったりするのではないかと思う次第である。

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からだ中に盛り上がった逞しい力こぶは今日も吃驚するほど絶好調で、少女の周囲には
マッチョを欲しがる人々が群がっていた。
らくらくと、少女が大岩を持ち上げるたびに上がる、街の人々の感嘆の声。
だーっ、と少女が雄叫びを上げるたびに、マッチョは飛ぶように売れるのだ。
がたがたと身を震わせるような寒さでも、少女のマッチョはそれをダッシュの勢いで
吹き飛ばしてしまうので、街の人々は少女のマッチョさえあれば冷え性知らずで
幸せになれたりするのだ素晴らしい。
岡の向こうに夕日が沈み始める頃になってようやくその客足はまばらになるのだが、
それまでにマッチョの売上は物凄いコトになってしまっていたりするのだった。
山の向うからは月が昇り始め、辺りはあっという間に夜。
はく息は白く、北風がぴゅうぴゅうと吹きつけるので街は物凄く寒い寒い空気に包まれて
しまうのであるが、マッチョ売りの少女は微塵も動じたりしないから驚きである。
雨が降ろうが、槍が降ろうが、少女のマッチョは大丈夫とかそういうことなのであろうか。
がんばってマッチョマッチョだったかいあって大金を懐にした少女は、町外れの自分の家に
にやにやしながら帰るのであった。

当然、マッチョ売りの少女の家は豪邸であった。
にやにやと相変わらず不気味な笑みを浮かべながら豪華な寝室の、広い広いベッドに
寝転ぶと、マッチョ売りの少女は何を思ったか、ベッドの布団の下からもぞもぞと
布キレのようなものを取り出すのだった。
少女にとっては少々きつめなのではないかと思われるくらいの小さ目のそれは、
なんと驚いたコトにぶるまぁというものであった。
なんでここでぶるまぁなのかということについては単に書いてみたいからと
言い訳する外ないが、とにかくマッチョ売りの少女は不慣れな手つきで
そのぶるまぁをはこうとするのである。
いつも街で見慣れているはずのマッチョも、そのぶるまぁを身に付けたとたん摩訶不思議な
光景へと早変わりするから不思議である・・・というかかなり不気味である怖い怖い。
たちまちのうちに、どういう原理だかは全く分からないが、マッチョ売りの少女は
ぶるまぁをはいた途端に眠りに落ちてしまうのであったぐぅぐぅ。

めを閉じたマッチョ売りの少女の頭の中を、妄想の如くに夢と幻が交錯し始めるのであった。
にやにやと、夢の中でもマッチョ売りの少女はちょっと怖い微笑を浮かべているのであった。
晴れの舞台とかいう奴の夢を見ているのであろうか。
れんが造りのマッチョ台の上で、マッチョ売りの少女を含めた国中のマッチョたちが己の
マッチョと誇りをかけて、マッチョ勝負を繰り広げていたりするのである。
のこりのマッチョたちは所詮アマチュアマッチョであり、プロのマッチョ売りである
少女の敵でないことは誰の目にも明らかなのだった。
国外のマッチョチャンピオンたちも次々とマッチョ売りの少女にマッチョを挑んだが、
誰一人として少女のマッチョマッチョには太刀打ちできない。
とんでもないマッチョが現れたと人々は驚嘆し、このマッチョ大会でのマッチョ売りの
少女の活躍は衛星放送で全世界を大パニックに陥れてしまうのだった。
自画自賛する必要もなく、少女のマッチョは全世界から畏敬の念を集めてしまったのである。
称号としてどのようなものが少女に相応しいだろうかという疑義が王子様から提示され、
国会で議論されたり一般に広く公募されたりした結果、「恐怖の大マッチョ」や
「小野小マッチョ」「PowerマッチョG4」「iマッチョ」「てりやきマッチョバーガー」
「マッチョ一本火事の元」などの様々な提案が為されたが、結局はシンデレラという
小娘の考えた「オーマイマッチョ」が新世紀を飾るマッチョにもっとも
相応しいとして採用されたのだった。
シンデレラの継母とその娘も「まいっちんぐマッチョ先生」という称号で応募したらしいので
あるが、惜しくも次点扱いとなってしまったらしい。

てんで脈絡のない夢であるが、マッチョ売りの少女の夢はここら辺からが本番なのであった。
いつのまにかは内緒なのであるが、マッチョ売りの少女は王子様を手篭めにして
しまっていたりするのだった。
る〜るるる〜とかなんとか訳のワカラン歌を口ずさみながら真っ白な表情で国民の前に
現れた王子様の横に、いかにも満足げでつやつやとしたマッチョ売りの少女の姿を
目にしたとき、全世界は次の支配者の出現を予感したとかしないとか。
とんでもないことだとは思うが、このときすでにマッチョ売りの少女はすでに母親としての
人生へのスタートラインにのし上がっていたのである。
かんべんして欲しいとあらゆる人が思ったかも知れないが、マッチョ売りの少女のマッチョな
赤子は瞬く間に次世代マッチョとしての生を受けてしまうのである。
うまれた赤ちゃんマッチョを祝うために、世界中にマッチョ法が制定されるということが
決まったとき、人々はまだマッチョマッチョによるマッチョのための政治に対してあまり
警戒心を抱いていなかったのかも知れない。
訳知り顔でマッチョに対する批判を述べる者々はたちまちのうちに投獄され、刑務所において
あらゆる手段を使ってマッチョに改造されてしまうのである。
だれもが新たな時代がマッチョによって支配されることを確信したその時にはすでに、
少女によるマッチョ政治の礎は確固たるものとなって人々の前に立ちふさがっているのだった。
それから長い年月が幸せのうちにマッチョにより支配されたコトはいうまでもない。
れんが造りのマッチョ台から始まったマッチョ売りの少女のサクセスストーリーは末永く
人々の記憶に刻まれ、それはマッチョ歴元年として新たな時代の幕開けと
定められるのであった。

はっ、とここで、マッチョ売りの少女はベッドの中で目を覚ましたのであった。
とにかく実にリアルな夢だったので、しばらくはぼぅっと周りを見回していたマッチョ売りの
少女であったが、すぐに頭を切り替えるといそいそと街に出かける準備を始めるのであった。
もしかすると、今の夢はマッチョ売りの少女の将来を予見したものであったのかも知れないが、
そんなことをマッチョ売りの少女が気にするはずもないのだ。
かの女ははいていたぶるまぁを丁寧に折りたたむと、再びそれをベッドの下に
しまうのであった。
くる日もくる日もマッチョ売りの少女は、ただマッチョを売り続けるのである。
雨がマッチョの庵の外で激しく降っていたが、そんなことでマッチョ売りを中止するほど
少女はヤワではないのだ。
谷には晴れていたとしてもまだ日の光も届いていないであろう早朝にも関わらず、
マッチョ売りの少女のマッチョすでに準備万端なのである。
のんびりと惰眠を貪っている暇はマッチョ売りの少女にはないのだ。
庵を後にした少女は、マッチョな足取りで街に向かうのであった。
はたしてこの先のマッチョ売りの少女の人生に待ちうけているものが何なのか、そんなことを
マッチョ売りの少女は考えたりしない。
今朝見たあの夢が何を意味していようと、少女には関係ない。
日々是マッチョ、それがマッチョ売りの少女の人生なのである・・・。

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もしかしてぶるまぁをはかせると、マッチョ売りの少女も萌え萌えかも知れないなぁとか
思って書いてみたのだが、その考えは甘かったとかそういうことらしい。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓