雨谷の庵

[0149] 実録!修羅場の意味とは! (2001/04/19)


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私は買うっス。

人間とは助け合って生きているものであるなぁと、最近とみに感じることがあったりする。
困ったときはお互い様。
人という字は棒と棒がお互い支え合っているのでありますよ。
そんなこんなで、疎遠親密の程度を問わず、知人友人の類は大切にしておくに
越したことはないとかそういうことである。
かくいう私にも僅かばかりの知人友人がいるわけであり、彼等は有り難いことに
雑文のネタを向うから持って来てくれたりするのである。
サンクス友よ。
あなたがたの常日頃の間抜けさ加減が、雨谷の庵を支えているのです。

それはともかく。
あいも変わらずネタが無いので、前回の柳某の話に引き続き、
今日も知人の話で茶を濁そうと企んでいる次第である。
本日の主役は秘密の研究員の一人、垣ノ木(仮名)27歳(推定)である。
垣ノ木某はさる大きなお友達にしか販売しちゃいけないいやんいやんなゲームの
製作会社に勤めていたりするのであるが、最近そのゲーム製作に関する内情のような
話を聞く事が出来たので、ここでネタにしてしまおうとかそういうことである。
題して「実録!修羅場の意味とは!」。
貴方の知らない修羅場がここにある。

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某出版系弱小ゲーム製作会社「緊急発進」。
ノベル系ゲーム「とうぞく(仮題)」の4月発売に向けて、社員一同一致団結して
取り組んでいた。
CGは原画/塗りを含めて2月末に終了し、5キャラ分あるシナリオも3キャラまでが
3月中に仕上がり、今はそのスクリプティング[*1]に追われていた。
何度か修羅場を経験したものの、製作は順調に進んでいるはず...であった。

[登場人物]

 垣ノ木:主人公。CG、スクリプティング担当
 社長 :兼企画、兼シナリオ担当、兼プログラマ
 岡さん:営業担当

○3/20
垣ノ木:社長、頼まれていたキャラのスクリプティング、終わったっす。
社長 :ああ、ご苦労。これであと2キャラだけだね。
垣ノ木:え?!2キャラ?社長、まだ1キャラも出来てないんすか!
社長 :うん。これから。
垣ノ木:マスターアップ[*2]は3/23っすよ!
社長 :分かってる。
垣ノ木:間に合わないっすよ!どうするんすか。
社長 :何とかなるだろ。いや、何とかするよ。まかしとけ。

○3/23
垣ノ木:社長、システムのデバッグ[*3]、だいたい終わったっす。
社長 :そう。ご苦労さん。すぐ直すから、そこにメモ置いといて。
垣ノ木:あと社長の2キャラ分のシナリオのデバッグが済めば、終わりっす。
社長 :ああ、あれね。あれはまだ。
垣ノ木:え?...ま、まだなんすか!?
社長 :うん。1行も書いてない。
垣ノ木:まさかシナリオも、っすか?
社長 :もちろん。
垣ノ木:どうするんすか!もう岡さんスタンバってるっすよ!
社長 :それは俺が何とかするから。締め切り延ばすように交渉するよ。
垣ノ木:延ばす...まあ、仕方ないっすね。
社長 :取りあえず、残りの2キャラのうちのこっち、君お願いね。
垣ノ木:はあ、分かりましたっす。

○4/7
垣ノ木:追加の1キャラ分、シナリオもスクリプトもデバッグも終わったっす。
社長 :ん。結構結構。頑張ったね。
垣ノ木:これと社長の1キャラ分を併せれば一通り完成っす。
社長 :そうだね。
垣ノ木:締め切り4/10に延ばして正解だったっすね。まだ3日、余裕があるっす。
社長 :うん。あと3日もあればあと1キャラ分、なんとかなるよ。
垣ノ木:え?...もしかして社長、まだできてないんすか?
社長 :言い難いんだけどね。まだなんだ。
垣ノ木:もしかして1行も?
社長 :まあ、そうとも言うね。
垣ノ木:どうするんすか!社長のはメインヒロイン[*4]っすよ!
社長 :まあまあ。まだ3日あるんだし。それより、システムのバグ潰さなきゃね。
垣ノ木:お願いしますよ...。

○4/10
岡さん:どう?修羅場ってる?
垣ノ木:ええ。まあ。
岡さん:お。だいたい出来てるじゃん。
垣ノ木:あとメインヒロインだけなんすけどね。
岡さん:夕方には間に合うんじゃないの?ところで社長は?
垣ノ木:え?...そういえばさっきまでそこに居たんすけど。
岡さん:社長の机にある奴、メインのシナリオじゃない?
垣ノ木:そこら辺にスクリプト、置いてないっすか?
岡さん:...無いみたいだね。
垣ノ木:無いっすね。
岡さん:あれ?これ書き置きじゃない?社長の。

「シナリオ出来たので、ちょっと実家に帰ってきます 社長」

垣ノ木:...何考えとんじゃあ!(岡山弁)
岡さん:締め切りまで、あと...3時間だね。
垣ノ木:こうなったらスクリプト、でっち上げたろぅじゃねぇか。
岡さん:え?ああ、そうだね。その方がいいかもね。
垣ノ木:岡さん、手伝ってください。うおりゃあ!

○4/11
岡さん:垣ノ木君、工場の方だけど直接持ち込みなら昼まで大丈夫だってさ。
垣ノ木:すんません。それなら間に合うっす。
岡さん:大変だねぇ。
垣ノ木:あとはこのスクリプトをぶち込めば完成っす。
岡さん:デバッグは?どうするの?
垣ノ木:もう間に合わないっす。岡さん、適当に一通り流して見て下さい。
社長 :やあやあ、すっかり寝過ごしちゃったよ。
垣ノ木:あ!社長!いままで何してたんすか!
社長 :いやあ、着替え取りに実家に帰ったら、すっかり寝込んじゃってね。
岡さん:今日の昼にマスター、工場に直接持ちこみますよ社長。
社長 :あ、スクリプト出来たんだ。凄いねぇ。
垣ノ木:....
社長 :じゃあ、あとの組み込みはやっとくよ。少し休んだら?お疲れ。
垣ノ木:....

こうして、「とうぞく(仮題)」は無事にマスターアップしたそうな。
なお、この物語はあくまでフィクションであり、実在の人物・団体・製品とは
なんら一切関係ありません。ありませんったらありません。OK?

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[*1]スクリプティング

 所謂ノベル系のプログラムは、システム部分とスクリプト部分とに
 分類する事が出来る。
 一般の意味でのプログラムはシステム部分のみで、画像の表示やセーブ/ロードと
 いったようなゲームとして汎用的な部分を受け持つ。
 一方、シナリオの分岐の制御や台詞と画像の表示指示などには簡易的な
 自作インタプリタを使う事が多く、そういったインタプリタをスクリプトと呼ぶ。
 つまりスクリプティングとは、シナリオ原稿に画像表示の指示や分岐を
 埋め込むことであり、実質的にノベルの出来具合のほとんどを左右する作業といえる。

[*2]マスターアップ

 最近のゲームはCD-ROMで配布することが多いのであるが、そのCD-ROMをプレスする
 為のもととなるCD-ROMのことをマスターCDと呼ぶ。
 そのマスターCDが仕上がる事をマスターアップと呼び、これが終わったということは
 ゲーム製作終了であることを意味する。
 初回出荷数にも依るが、マスターアップから販売開始までにはだいたい2週間かかる。

[*3]デバッグ

 一般にはプログラムの欠陥を取り除く事であるが、ゲーム製作の場合には
 内容に不整合がないかどうかを確認する作業もこれに含まれる。
 出会ったこともない女の子からいきなり昨日の話題を振られてしまうなどの怪現象は、
 このデバッグ作業の不足が原因である事もある。

[*4]メインヒロイン

 ノベル系ゲームの命綱といえるヒロインキャラの中でも特に際立った存在として
 設定するキャラ。
 マルチエンディング形式のゲームでは、複数の攻略可能ヒロインが存在するが、
 大抵の場合にはメインとなるヒロインを用意しておくようだ。
 メインヒロインはパッケージ絵やポスターなどでのイメージキャラクター的に
 扱う事が多いため、優等生、同年齢、おしとやかといった定番設定にすることが多い。
 大抵のメインヒロインが1番人気ではなく2番手辺りに位置することが多いのは、
 一般受けを重視するあまり製作現場スタッフの気合が乗らず、ぶっ飛んだ色合いが
 薄れてしまうという現象のためであるという。

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...4/27発売らしい。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓