雨谷の庵

[0147] 助けてコミックマスターJ (2001/04/12)


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他人の不幸は蜜の味。

「燃えた」と聞いて、貴方はまず何を思い浮かべるだろうか。
明々と燃え盛るキャンプファイヤーの炎を思い浮かべるだろうか。
熱い夏の甲子園で熱闘する高校球児たちを思い浮かべるであろうか。
それとも冷淡なことで知られる岡山県人のイメージをなんとか払拭すべく
県が採用したという「燃えろ岡山」という標語を思い浮かべるであろうか。
ってゆ〜か、そんなものを思い浮かべるのはお前だけだろ。>徳田。
それにしてもアレが「萌えろ岡山」だったら良かったのにと思うのは私だけだろうか。
...私だけですね。ゴメンナサイ。

「燃えた」
いきなりで申し訳ないが、上記の台詞を柳某(仮名)24歳(推定)から聞いたのは、
春も麗らかな昨日の深夜11時ごろのことであった。
柳某というのは私の同人仲間のリーダーで、元アニメータ、元ゲーム原画マン、
現フリーグラフィックデザイナーというオタク的にもちょっとどうかと思われる
非凡な人生の持ち主である。
こんな深夜に何を考えているのかは分からないが、その彼が私の玄関の前に
立っていたのである。

「燃えちゃったんですよ」
その言葉を最初に聞いたとき、私がまず採った態度は「はぁ?!」というかなり
間抜けた言葉を返すというものであった。
何しろ燃えちゃったそうなのである。
何が燃えたのかは分からないのであるが、とにかく尋常のことでないことは
間違いなさそうである。
「何が?」
次に私が採用した言葉が上記の問いかけなのであった。
全くひねりも何もあったものでは無いが、深夜ということで私の思考回路もやや
休憩モードに入っていたとかそういう事である。

「下宿が燃えちゃいました。僕の」
私の問いに答えた柳某のその内容の意味するところを私が理解するまでには、
多分5秒程度かかったのではないかと思う。
私的にはもっとかなり長い間、思考停止に陥っていたような感触を記憶しているのであるが、
実際にはまあそんな程度だろうと思う次第である。

徳田「下宿が?」
柳 「ええ」
徳田「それって、火事?」
柳 「そうとも言います」

なるほど、そうとも言うなあ。確かに。うんうん...じゃね〜だろ柳某。

徳田「なんじゃそりゃぁ!」
柳 「岡山弁になってますよ徳田さん」
徳田「いや、それはどうでもよくってだな。もしかして今、宿無しか!?」
柳 「ええ。だいたいそんな感じです」
徳田「これからどうするんだよ」
柳 「とりあえず泊めてください。今晩だけ」

もちろんそれは構わない。
というか、今晩と言わず好きなだけどうぞとかそういうことである。
聞けば、明日以降は一旦実家に帰り今後のことも含めて相談するということに
なっているらしい。

柳 「うたた寝から目が覚めたとき、一面煙だらけで驚いちゃいました」
徳田「よく無事だったなぁ」
柳 「なんか電気もイカレちゃってたみたいで、真っ暗でしたしね」

と。
ここまで聞いて、私はふとあることを思い出した。
柳某は冒頭でも紹介したように、我々の同人サークルのリーダーである。
我々の描いた原稿は一旦彼の元に集められ、そこで適宜編集を施しされた後に
印刷所へ持ち込まれることになっているのだった。
なぜ柳某がその役を担っているのかというと、彼が一番原稿を仕上げるのが
遅いという理由に因る。
仲間内では桁違いの描画能力を誇る彼であるが、いかんせん作業を始めるのが
締め切りの2日前というのでは無理からぬ話であろう。
結局、彼が編集を担当していれば、彼の原稿は締め切りのぎりぎりまでに仕上がれば
良いというコトになる訳で、当然原稿が落ちてしまうという事態を避けやすくなるとか
そういうことなのである。
決して彼が仲間内では最年少だから雑務を押しつけているとかいうわけではないので
誤解しないで頂きたい。

それはともかく。
そういえば、2月から3月にかけて描いていた原稿は既に彼の元に送った後であった。
更に思い出せば、恐怖のぷに絵師浜中某(仮名)の原稿も、既に彼の手元に
届いているはずである。

徳田「もしかして、原稿、燃えちゃいました?」
柳 「もちろんっす」
徳田「全滅?」
柳 「全ては忘却の彼方です」

うがぁぁぁぁ。なんてこったい。
僅かに火難を避けることができた原稿も、消化活動のあの遠慮無い集中放水にヤラレて
再起不能の有様とのことであった。
かろうじて焼け跡から拾い出したCD-ROMに画像データとして残っているものはあるが、
表紙と裏表紙しか無いそれは、既に同人誌とは呼び得ない存在でしかない。
原稿が燃えて本が落ちるとかいう話は漫画や作り話の世界では結構よく見かけたりもするが、
まさか自らの原稿が燃えてしまうというような経験をするとは思ってもみなかった。
まさに助けてコミックマスターJの世界である。
私の目標である平凡人生が今、かなり危険なピンチに陥っていると言っても過言ではない。
ちなみに同人誌の原稿描いている時点で平凡じゃないだろお前といったような
無粋なツッコミは速攻却下であるので予めご了承頂きたい。

そんなこんなで、柳某は一晩泊まっていったとかそういう事である。
ネットのメール仲間やチャット仲間、板仲間に、しばらくネットに出現できないという旨の
連絡をするために一晩中かかっていたとかいうのはまあご愛嬌だろう。
「それにしても、本当に裸一貫になっちゃいましたよ。あはははは」
あくまで能天気に振舞う彼であったが、心中を察するに忍び無い。
彼の不幸に比べれば、私の原稿が燃えた事など些細な出来事に過ぎないではないか。
5月のあのイベントも6月のあのイベントも多分参加出来なくなることはほぼ確定であるが、
まあ夏の決戦までには我々のサークルも復活することであろう。しくしく。
頑張れ柳某。
負けるな柳某。
私はいつでも君を応援しているぞ。

...とか言いながら、こんなところでネタにしている私は人間の屑ですね。
生きててゴメンナサイ。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓