雨谷の庵

[0128] パパは絶対 (2000/12/14)


[Home]
指輪を無くすのは止めておけ西山。

私はどちらかというと友人の数の少ない部類に入る人間であって、使い古された言いまわしを
用いるならば世の中には2種類の人しか存在しないそれは友人の多い人と少ない人なのである
君は後者だあわあわあわとかそういうことになるのであろうと勝手に自認することを
決意したのは確か中学生の頃だったような気がしないでもない。
実際小学生の頃の友人で、いまだに音信合い通ずるような輩は皆無であるし、それは
中学生の頃の友人にしても高校の時分の友人にしてもそうなのである。
理由については良く分からないが、まあそういう人間なのだろうと納得する他無い。
さて。
一応そんな私でも大学時分に一緒に遊びまわった友人との音信はさすがにまだまだ
有効期限が切れていないようで、年に一度は実家の岡山に帰ってそれらの稀有な
人々と旧交を暖める機会に恵まれたりもする訳である。

先週は学生の時に所属していたサークルの面々と久しぶりにゆっくりと話す機会があった。
かつては若さにまかせて無茶苦茶な生活を送っていた面々も今は30間近、
すっかりおっさんおばさんの雰囲気を醸し出し始めるお年頃になっていた。
なにしろ会合の場所がファミリーレストランだ。
どうなっているのだ君達。
学生の頃には居酒屋に駆け込むなり、ビールをケースで注文していた酒豪西山嬢(仮名)も
今やファミリーレストランで最初に紅茶を頼んでしまうというテイタラクである。
丸くなったな西山。心も体も。

こういった三十路前の人間が集まって話題にすることといえば、やはり結婚について
であろう。
前述の西山などは卒業するなり即結婚してしまった口であるが、中には卒業後も
全くお相手に恵まれない面々もいたりして、お互いにその後の経過報告などを
交えながら独自の結婚観について雄弁を振るいまくっちゃったりするとか
そういう趣旨である。
結婚して3週間後には結婚指輪を無くして青くなった話であるとか、今日は来ていない
あの娘はもう二人目を夏に仕込んだのであるらしいとか、私生理が不安定で
赤ちゃん出来難いみたいなのなどといった既婚側の話題豊富な有様に対し、
今年のバレンタインもチョコ皆無であったとか、付き合って7年になる
彼女にプロポーズする気が起きないであるとか、今度のクリスマスも
全く予定が無いですしくしくしくであるなどといった未婚側の話題の
貧弱極まりない有様についてはここで語るべくも無い。
ちなみにクリスマスに予定が無いという話題の主は私では無いので勘違いは却下である。
信じるように。しくしくしく。

それはともかく。
そういった中で特に注目を集めたのは前述の、付き合って7年にもなる彼女に対し、
プロポーズする気が全く起きないというかなり人畜無害な悩み何だか自慢何だかよく
分からない話題を提供した上代くん(仮名)である。
学生時代の上代といえば下品なジョーク、所謂ところの下ネタを駆使して
周囲に朗らかな笑いを振りまくことで仲間内では有名であり、7年前に彼が突然
年上の彼女と付き合い始めた時には一同かなりのショックを受けたものであった。
秘密結社「右手恋人同盟」崩壊の一因は、会長である彼の離脱に因るところが大きいとの
説は今でも有力視されているほどである。
そんなの作るなよ徳田。しくしく。
それはともかく。
それだけの衝撃を与えたにも関わらずこの7年間というもの何ら進展を見せていない
上代の恋愛関係について、我々がこの機会に並々ならぬ助言を与えるに至ったのは
当然の成り行きと言えるかもしれない。

 古田「仕方ねぇなぁ上代」
 西山「うちらがプロポーズの方法を決めたげらぁ」
 徳田「とりあえず式は来年の9月がいいんじゃないか」
 上代「おいおい、もう式の日取りも決まっとるんかぁ」
 西山「ええなぁ9月。その頃なら多分暇じゃわ」
 古田「わしも」
 上代「おいおい、お前等わしの結婚式に来るつもりなんか」

本人の意思など最初から斟酌するつもりもなく、周囲は勝手に盛りあがるのであった。

 西山「子供は早う作った方がえぇよ。あれもやっぱり勢いじゃけぇ」
 上代「お前に言われとぉねぇわ。だいたいお前はまだ作らんのんか」
 西山「時期を逃すとなかなかなぁ...」
 徳田「娘はきっと可愛いぞ」
 古田「上代のことじゃけぇ、親馬鹿大決定なんじゃろぉなぁ」
 西山「娘の結婚式で泣くってゆうのもええなぁ」
 上代「泣かねぇよ。いや、それ以前にまだ娘いねぇって」
 徳田「お父さんのパンツと一緒に洗わないでとか言われるのだ」
 古田「上代のことじゃけぇ、パパと呼ばせるじゃろう」
 上代「おお、それはそう。パパは絶対」

何がパパは絶対か上代。
そんなこんなで、我々同志が上代のために作成した人生設計は以下である。

・プロポーズはティファニーの指輪売り場で。(西山案)
 「どれでも好きなのを選んでよ」
 「それって結婚指輪のこと?」
 「うん。そう」
・結婚式は来年の9月。(徳田案)
・新婚旅行はハワイ。(西山案)
・子供は娘を一人。お父さんのことはパパと呼ばせる。(上代案)
・娘が高校生の時に「パパのパンツは一緒に洗わない」と言われる。(徳田案)
・娘の結婚には取りあえず反対する。(古田案)
・娘の結婚式では必ず泣く。(西山案)
・孫が出来たら物凄く可愛がる。(古田案)

...なんだかよく分からない人生設計になってしまった。
有り難く参考にするように上代。
それにしても西山、ティファニーとやらの指輪はお前が欲しいだけじゃないのか。
だいたい恥ずかしすぎるぞ。その台詞は。

 西山「そんなんじゃけぇ徳田くんは彼女が出来んのんじゃ。ロマンが足りん」

ロマンですか。
それは足りないかも知れないである。
しくしく。

雨谷の庵は今日も雨。
< Back |List| Next >
管理者:徳田雨窓