雨谷の庵

[0085] きっちり設計したら大丈夫 (2000/05/31)


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生産性の向上って何?リカちゃん分かんなぁ〜〜い。

[質問]
今度新しくオブジェクト志向言語とかいうものを開発で導入しようかと
思っていますが、生産性がどれだけ向上するのかという見積もりを上司に
提出しなければいけないんです。
設計のためのツールを使って、きっちり設計したら大丈夫でしょうか?

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[回答]

設計ツールと生産性の因果関係について、私は懐疑的な意見を持っています。
きっちりとした設計と生産性の因果関係について、私はその存在を認めています。
設計ツールを使うかどうかが問題ではなく、きっちりと設計するか
どうかが問題であると、私は主張します。

設計ツールときっちりとした設計との因果関係について、
私は懐疑的な意見を持っています。
確立された開発方法ときっちりとした設計の因果関係について、
私はその存在を認めています。
設計ツールを使うかどうかが問題なのではなく、開発方法をどのようにして
明確に定義付けるかが問題であると、私は主張します。

設計ツールと確立された開発方法との因果関係について、私はその存在を認めています。
何故なら、設計ツールはある確立された開発方法を援助する形で作成されることが
多いと考えるからです。

従って、設計ツールを導入する際には以下のような注意を払うべきであると考えます。

・設計ツールが前提としている開発方法は何か。
・前提となっている開発方法の、適用範囲はどのようなものか。
・前提となっている開発方法の適用範囲と、採用予定の開発ツールの適用範囲との
 整合性は適切か。
・前提となっている開発方法に従ってきっちりとした設計を行うことのできる
 技術者は確保できるか。
・きっちりとした設計にたいして予定している開発ツールを適用した場合、
 その工数はどのようにして見積もることができるか。

以上を明確にした時点で初めて「生産性はどのようにして向上させることが可能か」
という議論が可能になるのではないかと、私は考えています。
以上の論議を踏まえて、貴殿の状況を整理してみました。

・貴殿配下の技術者は、以前に開発方法を確立したことがある。
・新規の開発ツールを導入したい。

今までの開発方法は大切な資産と考えることを提案します。
であれば当然、次期の開発でもその手法を踏襲した方法を採用すべきだと思います。
新しく開発ツールを導入するからといって、現存の開発方法を
放棄しなければならない理由はないと考えます。
ここで問題となってくるのは、その開発方法での適用範囲が新しく導入する
開発ツールの適用範囲と整合性が取れているかどうかだと考えます。
上記については、何らかの方法で確認・検証する必要を感じます。

もし、適用範囲の整合性が悪い場合には、開発ツールの新規採用を諦めるか、
開発方法を改訂するかのいずれかになるかと思います。
開発方法を改訂する方向を採用した場合この段階で、設計ツールを
採用するかどうかを論議する必要が出てくるかも知れないと考えます。

以下、3通りのケースを考えてみました。
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case 1:現存の開発方法をそのまま採用可能な場合。

従来の開発と比較することで、生産性の向上の論議をすることが可能です。
初期の導入コストとして

・現在使用している開発ツールと新規に採用する開発ツールの違い

を計上する必要があります。
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case 2:開発方法を改訂した場合。

新たな開発方法で最初から生産性を議論することは出来なくなります。
生産性向上の論議は同じ開発方法を適用した2回目以降の開発で行います。
初期の導入コストとして

・現在使用している開発ツールと新規に採用する開発ツールの違い
・改訂した開発方法の妥当性検証
・きっちりとした設計が可能な技術者の養成

を計上する必要があります。
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case 3:開発方法を改訂し、その支援のために設計ツールを導入する場合。

新たな開発方法で最初から生産性を議論することは出来なくなります。
生産性向上の論議は同じ開発方法を適用した2回目以降の開発で行います。
初期の導入コストとして

・現在使用している開発ツールと新規に採用する開発ツールの違い
・改訂した開発方法の妥当性検証
・きっちりとした設計が可能な技術者の養成
・採用した設計ツールの妥当性検証
・設計ツールの習得

を計上する必要があります。
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最も現実的なのはcase 2のように、私は感じます。
もし設計のための支援ツールをどうしても導入したいということであれば、
case 2の開発で生産性を論議した後(開発の2回目以降)に導入する
ことを私としてはお勧めします...

...とまあ、こんな感じで今日も嘘八百かまして仕事をサボってみたり
しているわけである。
見た目を繕うのは簡単であるし、中身の無い弁論もまた簡単である。
と、ゲーテが言ったことにしておこう。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓