雨谷の庵

[0083] いつも通りの朝 (2000/05/24)


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ボケても周りに誰もいない。

いつも通りの朝のはずであった。
何しろ昨日は何をトチ狂ったのか、午後9時に寝たりしたのである。
今時、小学生でもそんなに早い時間に就寝したりはしないであろう。
私はいつも午前7時に起床するのであるからして、実に10時間にも及ぶ
睡眠時間を満喫してしまうことになるのである。
何故そんなに早くに寝てしまおうなどと考えたのかはこの際問題ではない。
人間、眠い時には寝るべきであるとここで声高に主張すると言う手もあるには
あるが、今日のところは勘弁しておいてやろう。有難く思え。
って、誰に向かって威張っているのか徳田。

いつも通りの朝のはずであった。
何しろ、金縛りにあったのだ。
金縛りと言えばアレだ。浅い眠りにおいて、意識がはっきりしているにもかかわらず
体が動きやがらないために見てしまうという、幻覚の一種だ。
世の中には金縛りをもって心霊現象だの神の啓示だの超科学的上位存在だのを論じる
輩も存在すると聞くが、まあそれも今はどうでもいいことなのである。
とにかく久しぶりの金縛りであったし、また見事なまでの金縛りであった。
一瞬、幻覚と現実の区別がつかない程であったので、私が大きな叫び声を
上げちゃったりとかしたなどということは内緒である。
うえええん。怖かったよぉ。しくしく。
って、何故にいきなり幼児退行しておるか徳田。

いつも通りの朝のはずであった。
何しろ、電車は混雑していたのだ。
これこそいつも通りの朝の証左に他ならない。
座席などという有難いものに座れようはずもなく、私はいつものように通路の
真中あたりで立っていたわけである。
スーツ姿のサラリーマンがいつものようにひしめき、厚化粧のおばさん連中が
でかいケツで人波を押し分けていたりする様はいつ眺めても楽しさいっぱいの光景である。
ところで先ほどから、私の隣に立っている中年オヤジは私の耳元で妙に荒い
鼻息をハアハアハアハアと噴出しまくっていたりするのであるが、
一体どうしたことであろうか。
興奮やるかたなしとかそういうことであろうか。
それとも、鼻が詰まっていて息苦しいとかそういうことであろうか。
それとも、鼻息同盟に所属の鼻息会員、会員番号12番とかそういうことであろうか。
恐怖、鼻息同盟の世界戦略。ちょっとイヤだ。
ちなみにその中年オヤジのイヤラシゲな手の平は先ほどから私の右斜め前の
女性の背後に向けられているようであるが、まさかそんなそういった込み入った
事情の最中なのであるのであろうか。
私は興味深々の呈でその様子を眺めていたのであるが、ふと目を上げるとその
中年オヤジと視線が交差しまった。
で、中年オヤジは次の駅で降りて行ってしまったのであるが、私は何か悪いことを
してしまったのであろうか。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえとか、そういうことか。
ってゆーか、人を疑うのは良くないぞ徳田。

いつも通りの朝のはずであった。
何しろ、会社に出勤するのである。
平凡で平凡で呆れてしまうような人生を送ることを目標にしている私であるからして、
朝といえば会社に出勤しなければならないのである。
サラリーマンと言えば平凡この上ないものであるし、朝に出勤というものもまた、
平凡を極める者としては欠くことのできないものであると私は常日頃から考えている
次第である。
というか、普段からそういったくだらないことしか考えていないところがまた
平凡な人生には必要な要素であると思っていたりもするから徳田はタチが悪いとか
昼行灯だとか謂れのないことを.....あれ?
これはどうしたことであろうか。
誰もいないではないか。
時、既に9時である。
定時出勤を旨とする私が一秒たりとも早く来たりは絶対にしないわけであるので、
早く来すぎて誰もいないとかそういう事態でないことは明らかである。
良く見ると、机や椅子といった会社というところにとって必要不可欠と
思えなくもない物体も、その姿がない。
というか、もぬけの殻ではないか。
もしかして階を間違えたのか?いやいや、ここは確かに6階だ。
落ち着け落ち着け。落ち着くんだ徳田。
こらこらシェーをやっている場合じゃないだろ。
そういうことは客がいるところでやりなさい...じゃなくて違うだろ徳田。

そうだ思い出しました。
先週、ウチの会社は引越したのでありました。
つまり、ここは確かにウチの会社の所在地なわけであるが、少しばかり時間軸に
相違が生じていたとかそういうまあ、なんというかそういった細かい理由で私が
呆然と馬鹿面下げてしまったとかそういうことなわけである。
全く問題無し。
そう言えば某雑文書きの方もオフィスが引越したとか書いていたな。奇遇だ。
などといつまでもくだらない事を考えている場合では無い。
早く新しい会社所在地に向かわねば、遅刻だ。
まあ、遅刻も平凡な人生には欠かせぬ要素と言えなくも...(以下省略)

...いつも通りの朝のはずだったんだがな。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓