雨谷の庵

[0061] 電報は郵便局ではなくNTT (2000/03/10)


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まったく勝手に結婚しやがって。

電報などというものとは、無縁の人生を送ってきた。
私が初めて電報なるものを認識したのは、テレビ番組「笑っていいとも」では
ないだろうかと考えている。
タモリだかモリタだかよく分からない黒眼鏡の下品な面をしたおっさんが
毎日の正午に現れてだべっているだけという、あの長寿番組である。
件の番組では毎回、ゲストとして芸能人が登場する。
そのゲストに対して送られてくるのが電報である。
「番組出演おめでとう」だの
「今度遊びに行きます」だの
「これからもよろしく」だの
「この前は面白かった」だの
まあとにかくよく分からない個人的なメッセージが書き連ねてある類の
ものであると、私は解釈していたものである。

そう言えば、卒業式とか入学式とかでよく祝電披露とかいう予定が組まれていたが、
あの祝電というものが電報の一種であると認識したのはいつのことであったか。
多分はじめの頃は、祝電と電報を違うものと勘違いしていたように思う。
電報は芸能人の戯言で、祝電は政治家の戯言だ。
だいたいそれで合っているようにも思えるので、勘違いの期間も長かったのだろう。
とにもかくにも芸能人にしろ政治家にしろ私とは縁のない世界であることは間違いない。
芸能人の顔は嘘だし、政治家は言葉が嘘だ。
どっちも嘘つき。正直な私とは相容れようはずもない。嘘です。
それはともかく、そういった別世界の人々がやり取りしている電報というものもまた、
私にとってはなんだか異世界の物体に思えたとしても不思議ではないだろう。

転機はいつも知人がもたらすものだ。私は平穏に暮らしたいだけなのに。
何だかよく分からないが、かつて会社の同僚であった藤田某(仮名)から、
以下のようなメールが送られてきた。

>元気か徳田。
>俺、結婚することになった。
>祝電待っている。

上記のような文章の後に、披露宴の会場と日時が事細かに記されていた。
どういう事だこれは藤田某。
結婚するから祝電を出せとかそういうことなのか。
お前はもう会社を辞めていて私とは赤の他人のはずだが、それでも
祝電を出せとかそう言いたいのか。
会社の同僚とか言えば聞こえは良いが、一緒に仕事をしたこともないし、親しく話を
するような仲であったわけでもない私に、祝電の義務があると主張しているのか。
それとも何か。友達いないのか藤田某。
よろしい。出してやろうじゃねぇか祝電とかいう奴を。
とかなんとかいう訳で、私は人生で初めての電報を出す羽目になったわけである。

まずは電報の出し方をマスターせねばならぬ。
何しろ芸能人や政治家が操る類の通信手段である。
どこで嘘をつかれるか分かったものではない。
こちらとしても礼儀作法を含めた電報道を熟知した上で事にあたらねばならぬ
ということは十分に予想できることである。
とか呟きながらWebで検索してみたところ、何と昨今ではNTTのWebサイトにて
電報を受付しているというではないか。
私はてっきり郵便局に赴いて何らかの小難しい書類をしたためねばならぬものと
ばかり思いこんでいたのだが、どうやら大きな勘違いをしていたらしい。
だいたい、電報は郵便局ではなくNTTのサービスであった。
そうか。だから「電」なのだな電報。
皆さんも郵便局で「電報はどうやれば出せるのでしょうか」などといった間抜けな
質問をしないよう、日ごろから十分注意するべきである。しくしく。

ま、そんな些細な勘違いは気にせずに。
件のWebサイトにて電報を出すことにした。
会社のパソコンから出せば、その間の通信経費は会社持ちである。素晴らしい。
まずは電報の種類を選べと、件のサイトは指示してきた。
電報には大別して3種類が有るようである。
祝電と弔電と一般である。
祝電にはキティちゃんの文様とか刺繍入りの包装とかいった色々の種類が
あると、件のサイトは画面に提示している。ピカチュウが無いのが残念。
弔電もしかり。種類が豊富だ。
しかもその種類によっては追加料金が5000円もしたりするような
恐るべきものもあるようである。何を考えているのかさっぱり分からん。
そんなことにお金をかけるような馬鹿なことをする訳にはいかん。
む。カトレアとかお見舞いとかは追加料金なしであるな。
ということは祝電のカトレアであるか・・・いや待て。
良く見ると、祝電や弔電は一般に比べて基本料が高いではないか。
駄目だダメだ。一般だ一般。
祝電など誰が送ってやるものか一般で十分だ。

さて件のサイトは次に、電報の内容を入力しろと指示してきた。
電報の内容は25文字までは基本料金でOKだが、それ以上になると5文字毎に
金額が加算されてしまうものであるらしい。
送り主の名前や肩書きを含める場合にはそれも文字数として数えられてしまうので
注意が必要だ。もちろんここはきっちり25文字を入力する。
その後は退屈な作業である。
藤田某の名前と、送り先の会場、そして私の住所と氏名連絡先を入力するだけである。
それらの情報を送信すると、受付番号なるものが表示されるのでこれをメモしておく。
後はフリーダイアルの電話番号へ受付確定の旨を通知すれば良いのだ。
至極簡単である。やるなNTT。

とまあこのようにして、今日から私も電報人である。
芸能人や政治家の類と肩を並べて生きていかねばならぬ宿命を背負ってしまったわけだ。
ま、雑文書きは皆嘘吐きでもある事であるし、嘘という点では芸能人や政治家に
勝るとも劣らぬことは間違い有るまい。ということは特に問題無しだ。

 結婚という人生の牢獄を自ら選択した勇気を祝す。
 徳田

受け取ってくれ藤田某。私からのお祝いの言葉だ。
しかも初物だしな。いやん。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓