雨谷の庵

[0056] 歩く姿は絹豆腐 (2000/02/23)


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冷蔵庫は良いねぇ。

冷蔵庫である。冷蔵庫なのだ。
コンセントを繋げばそこはもう北国だったとかいう、例の奴である。
頭は北極、体は釧路、歩く姿は絹豆腐とかいう、アレである。
中に入って「冷え冷え〜〜」などと言っていたりすると、
馬鹿丸出しであることがバレバレになってしまったりするとかいう
モノでもある。
何しろ冷蔵庫なのだ。
新鮮な野菜が一日にして腐敗の憂き目に遭っていたあの日々は
過去の思い出と化すのだ。
モチの老化現象もこの装置でもって解消、モチは不老不死を
得ることに大成功である。
古代中国は秦の時代、始皇帝をだまくらかして東の蓬莱山を目指したと
言われるエセ導師も仰天の、まさに一大科学技術と言えよう。

神は言われた。まず始めに冷蔵庫在れと。
生まれ出でてのち7歩を進みて天上天下唯冷蔵庫。
まあとにかくこれで夜も安心である。

とか何とか妙に能天気な文章を綴ってしまっちゃったりしているのには、
少々の訳がある。
おらおら控えおろう。ここにおわす方をどなたと心得る。
何と、私の目の前に鎮座しているのは冷蔵庫であったりするのである。
天地開闢以来、私が個人的に所有したものとしては始めての冷蔵庫であると
断言するにやぶさかではない。
いや、ここで声高に私は宣言したい。
これは断じて私の冷蔵庫であり、しかも初めての冷蔵庫なのである。
初めての味はレモン味。何だそれは。
それはともかく、世界中を探し尽くしたとしても私の冷蔵庫なるものは
ここに存在するコレ唯に一つのみなのである。

思えば、関西に住んでいたときに借りていた下宿はワンルームであった。
冷蔵庫を置くスペースはもちろん無く、ましてや台所の存在皆無にして
冷蔵庫の導入に際しての積極的かつ合理的な理由を私は持っていなかった。
勢い、食事はコンビニや定食屋といった他人の手を借りねばならず、
それによるエンゲル係数の増加傾向には歯止めをかける手段を持たなかった。
ビールを買ってきても冷やしておくこともかなわず、買ってきた
ビールはすべてを飲み尽くすが故に、毎晩のように酔いつぶれていたこともある。
あ、いや、買いすぎなければ良いのではないかと言うご指摘については
十分に予想しているのであるが、平凡人たる私はなぜかビールを必ず
2リットル買ってきてしまう生き物であるようなので、気にしてはいけない。

しかし、ここに来て東京左遷という転機が訪れたわけである。
借りた下宿は1DK。
自炊に足る台所と、冷蔵庫を設置するに十分な空間があったりするわけである。
ということで、買ってまいりました締めて約3万円。
不思議な不思議な池袋で有名な、あの電気屋さんにて注文、それが先週の
土曜日に無事到着した次第である。
ああ、カッコイイではないか四角いボディ。
冷やす機能が稼動している時に立てる、あのブーンブーンとかいう唸り声も、
心なしかセクシーである。

とにかくその土曜日には早速、私は近所の八百屋に行き冷蔵庫の中身を
購入することにした。
レタス。
憧れである。冷蔵庫なしでは2日ともたない故に、今までは購入に至ったことは
無かった。
トマト。
5個パックで買えばお得なところをわざわざ1つだけ買い求め、損した気分に
なったあの日々は永遠のセピア色である。
ホウレンソウ。
見る間に葉っぱが萎びて黄色くなっていった君を、今までどれだけ
惜しんだことだろうか。
ネギ。
君もこれからは冷蔵庫と共に余生を過ごしたまへ。

とにかくこちらに引っ越してきてから2週間、私のメニューは腐りにくい
ジャガイモやニンジンといった野菜でのみ構成されていたのである。
ジャガイモとニンジンのカレー。たんぱく質は納豆で補給。
ジャガイモとニンジンのラーメン。卵を入れてみたりした。
ジャガイモとニンジンのシチュー。納豆とお友達である。
ジャガイモとニンジンの味噌汁。卵と納豆のいずれにもフィット。
このようなジャガイモとニンジンで構成される人生とも、決別の時である。

ともかく冷蔵庫に今までに取り扱ったことも無い野菜類を詰め込んで、
私は大喜びである。
今夜のメニューにはサラダが加わることになろう。
それにしても残念なのはビールを詰め込むだけの空きがもう無いことであろうか。
ということで、今日もまた二日酔いである。ぐぇ。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓