雨谷の庵

[0053] お徳用の300g入り (2000/02/14)


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こんなことを言っていても、チョコレートは好きであったりする。

「まあ、俺の話を聴け」
などと、エラそうな口調で私に言うのは、悪友こと大友某(27才雄、仮名)である。
大友某は何故か今、私の部屋にてコタツにミカン状態なのである。
時は2000/02/13の日曜日、夜。
何が悲しくて男二人でミカンを囲まねばならぬのか。
おりしもテレビジョオンからはバレンタインデーなる異国情緒溢れる話題が漏れ聞こえ、
しかも明日はそのバレンタインデーとか言うものなのである。

バレンタインデー。
クリスマスや七夕などと並び称される恋人中心的世界観に基づくお祭りである。
二人の為に世界はあるの。
とかそういうヤツである。
地球は回っていたりするのだ二人の為に。
とかそう云うヤツであるのかもしれない。
貴方さえ居れば、世界がどうなっても知ったこっちゃないのよ。
ここまでくれば恋人中心的世界観も極まれりといったところであろうか。
とにかく欲情した女性がその目的を遂行するための一手段としてチョコレートなる
食料品の一種目でもって贈物となし、対象となる男性に対して呪縛を行う、
そういったいわば中世的呪術儀式が公に解禁されているのが、バレンタインデーなる
日であるのである。
この儀式の恐るべき点は、呪縛された男性がその呪詛返しを行わねばならぬところであろうか。
ともかくバレンタインデーの対として定義されているホワイトデーなる日でもって、
幸か不幸か対象とされた男性は呪いに対する返しを行わねばならぬと
取り決められているのである。
これを怠ると恐ろしいことになる。

「あの人、ちょっとカッコイイけどお返しなにもなかったのよね」
「もしかして、チョー朴念仁?」
「ホモホモチャージ!なんじゃない?」
「薔薇族ってゆーか?」
「デブ専っぽいしぃ」

などというあらぬ噂で、巷が持ちきりになってしまいかねないこと請け合いなのである。
ああ、恐るべしバレンタインデー。
ところでホモホモチャージとは何であるか。誰か教えてたもれ。

「そういう御託をいちいち嘘八百で並べるあたり、お前のモテなさ加減がわかるな。徳田」

な、何をいきなり言い出すのだ大友某。

「今夜はそんな寂しく侘しい、ワビサビ人生を送っているお前を慰めてやろうと思い、
 忙しいのを我慢して来てやったのだ」

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[ナイスガイ大友のホットバレンタインデー]

あれはもう5年ほども前の話だ。
当時俺様は学生交響楽団でバイオリンパートに所属していた。
バイオリンパートというとアレだ。女の子が多かったのだ。
今はどうなのか知らないが、その頃の俺様交響楽団のバイオリンは女の子が多かった。
むさっくるしい野郎なんてものは、俺様を含めても3人しかいなかったのだ。
いやいや俺様はナイスダンディだから、むさくるしいのは2人だけだな。はっはっは。
それはともかく。
女の子が多くて男が少ないと、当然バレンタインデーはお楽しみ行事になるわけだ。
義理チョコにしても、予算を贅沢に使えるわけだから、男一人頭の分け前が豪華なものになる。
さらに、俺様は渋めのイイ男なので当然女の子のファンの数々からファンチョコを
多数ゲットできると言うわけだ。
ちなみにファンチョコとは、義理であげるわけでもなくもちろん本命でもないという、
若干中間的な意味合いの濃いチョコのことだ。覚えておきたまえ。

その年もそんな感じだったのだよ徳田君。
仲間の野郎共2人には、女の子からの義理チョコが渡されていたな。
市販の板チョコを可愛げにラッピングしたものだ。
結構大きなサイズだったので、連中も喜びひとしおのようだ。
だが、しかし。俺様へのチョコは一味違っていたのだった。
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な、なんだなんだ。どうしてそこで話を止めるのか。

「さてお立会い。俺様がもらったのはどんなチョコだったのでしょう」

う、うぐぅ。クイズか。やるな大友某。意表を突いた攻撃だ。

ここまで引っ張ってきたのだから、それはちょっと他の2人とのは異なるチョコレートで
あったのであろう。

「うむ。その通りだ」

どんなのだったのかまでは分からん。教えてたもれ。

「はっはっは。そうか分からないか」

大友某は何とも威張りかえったように胸を張って見せている。ヤな奴である。

「なんと、お徳用の300g入りチョコ2袋だったのだ」

はぁ?

「なにしろ合わせて600gのチョコレートだ。市販の板チョコなどアウトオブ眼中って奴だ。
 板チョコなどせいぜい100gがいいところだろう?ということは、他のむさくるしい野郎2人
 合わせても、俺様の1/3に過ぎない訳だ。つまり女の子の愛情、俺様3倍取りってことだ」

はぁ・・・。

「どうした徳田。ハートフルな話だったろう。お前も俺様のように人に愛される
 キャラクターになれるよう、精進しろよ。じゃあな」

と、大友某は何とも唐突に帰ってしまった。

なんだ。何が言いたかったのだあいつは。
たくさんチョコがもらえて嬉しかったとかいうことか?お徳用チョコなのに?
他の2人よりもたくさんもらったことがそんなに嬉しかったのか?お徳用チョコなのに?
愛情3倍とかいうのを自慢したかったのか?お徳用チョコなのに?
なんかハートフルとか言う以前に、哀愁が漂ってないか大友某。
もしかして、もしかしなくても嫌われ者か大友某。
げに、恐ろしきはバレンタインデー。
お徳用チョコには要注意である。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓