雨谷の庵

[0051] 定価で売り買い (2000/02/07)


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東京の食料品は高かったりするのである。

「定価というのは比較的新しいもの、つまりこの100年ほどのものにすぎず、
 大量生産/大量マーケティングと共に存在するものだ」

このような考え方というものが存在するらしい。
言われてみればなるほどな話ではある。
例えば少量生産の社会があったとする。その場合、同じ商品というものが
お店にいくつも並んでいるわけではないのであるから、その商品に付けられている
値段が、他の店のものと同じであるかどうか、つまり定価と言えるものであるか
どうかは実際に比較してみる以外には無い。
また、少量マーケティングの社会があったとする。この場合だとお店というものが
存在しないのであるから、値段が変動的なものになるだろう。そうすると、今自分が
支払った値段が過去においてもまた今後も同じであるかどうか、つまり定価として
考えてよいものかどうかは、実際にその価格の推移を比較する以外には無い。

結局のところ、大量生産/大量マーケティングにより、場所と時間が異なる場合でも
同じ価格を保証することが可能になると考えてもよさそうである。
実際よくよく考えてみると、大量に物が有り、それらの品質がある程度均等である
という仮定が無ければ、それらを予め決めておいた定価で売り買いするなど
ということを思いつこうはずも無い。
考えてみれば当たり前な話では有る。

実際のところ、日本で値札の習慣が広まったのは戦後であるらしい。
ではそれまではどうしていたかというと、売り買いの度に値段交渉していたのである。
「おっちゃん、これいくらや」
「ほい、300万円」
このような会話の中に、日本の古き時代を垣間見ることができると思うのであるが、
いかがであろうか。
上記を関西人のベタベタな会話に過ぎないなどと思ってはいけない。それだと、
この先の私の雑文の論旨の根底が最初から覆ってしまう。
論旨の根底が覆ると、困るのは私だけである。読者の皆様ではない。
であるからして、是非とも覆さないで頂きたいと思うわけである。よろしいか。

とにもかくにも、そんな転ばぬ先の言い訳じみたことはさてさて置いておき、
強引に話を先に進めるのである。

関西に先ほどのような値段交渉の伝統が脈々と伝えられている歴然たる事実は、
ナニワといえば商人、商人といえばナニワという土地柄に起因したものと考えて良いであろう。
戦後以降の大量生産/大量マーケティング時代への突入に際しても、ナニワの商人魂が
値段交渉という古式ゆかしい伝統芸能を保持させずにはおかなかったことは想像に難くない。
ちなみに、「商人」のところは「あきんど」と読み解いて頂きたい。蛇足だが。

ところで一方、大量生産/大量マーケティングの旗頭と云へば、コンビニエンスストアなる
ものを挙げることができると、私は主張する者である。
全国展開な画一的店舗。年中無休で24時間営業。
まさに場所と時間を問わず定価を保証することに、何の疑問も抱く必要の無い営業形態で
あると言えるのではないかと愚考する次第である。
私は常々、このコンビニエンスストアの食料品の値段を高いのではないか高いのではないかと
いぶかしんでいたのであるが、それもこれも大量生産/大量マーケティングに裏付けられた、
定価というものの威力であるに他ならないのではなかろうか。

そこで私は調査を行うべく、デパートの地下食料品売り場に足を向けたのである。
デパートの地下食料品売り場はスーパーマーケット然とした外見で有りながら、
その実は紛れも無いデパートであり、そのため売られている食料品の値段は一般の
スーパーマーケットに比して若干以上に高めであることが知られている。
そのデパートの地下食料品売り場における食料品の値段と、コンビニエンスストアとの
それをスーパーマーケットでの結果と比較してみようというのが調査の概要である。
以下、その結果である。

商品名 デパート コンビニ スーパー
--------------------------------------------------
卵10個(M) 140円 150円 110円
納豆2パック 130円 120円 100円
カレールウ1箱 117円 130円 100円
ウインナー1袋 198円 198円 198円
にんじん1袋 198円 計測不能 100円
ジャガイモ1袋 250円 計測不能 100円

いかがであろうか。
デパートの地下食料品売り場とコンビニエンスストアの食料品の値段は、
スーパーマーケットのそれよりも結構割高であることが調査結果によって
裏付けられたと云えはしまいか。
傾向としては、デパートの地下食料品売り場とコンビニエンスストアとでは、値段にほとんど
差が無いということも、事実として認定してよさそうである。
例外はウインナー1袋で、これはウインナー1袋という食品の工業製品としての性格が
影響しているものと思われる。
それにしてもジャガイモの250円は高すぎるぞ。
再考せよ。ライオンズを経営している系列のデパートよ。

それはおいておくにしても、今回の調査結果のいずれもが、以下のような結論を
支持していると私は主張したい。

・大量生産/大量マーケティングが定価の維持に関する大きな要因である。
・コンビニエンスストアという営業形態は、大量生産/大量マーケティングの申し子である。
・デパートの食料品売り場の食料品はやっぱり高い。
・私の今夜のメニューはカレーである。
・しかもウインナーカレーである。
・ついでに言えば、明日の朝食のメニューは納豆と卵かけご飯である。

そう云えば玉葱を買い忘れたのは失敗であった。
いや、そうじゃなくて。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓