雨谷の庵

[0041] 来月から東京勤務 (2000/01/04)


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けだし、人間の生きざまは人生です。

「徳田君徳田君。引越しの準備は進んでいるかね」

これが我が敬愛すべき部長の新年第一声であった。
思えばこれが不幸の始まりを告げる鐘の音であったのかもしれない。

「はぁ。何のことでしょうか」
「またまた君はおトボケて。この前の会議で決まったじゃないか」

この前の会議というとアレである。
私が半分くらいは寝ていたヤツだ。

「君、来月から東京勤務だよ」

なんですと!?
それは初耳と言う奴です部長。
寝耳に水とはよく言ったもので、私は作者を尊敬するにやぶさかではない。
鳩が豆鉄砲を食らうということが本当に有りうるのかどうかについては
寡聞にして知らないのだが、今の私の状態はまさにそれだ。

東京である。
あの伝説の都、東京なのである。
天皇陛下の御自宅が有ったり、永田町で妖怪爺婆が税金を食いつぶしたり、
都庁がロボットで決戦兵器に変形したり、ゴジラやガメラがビルを
壊してまわったり、東京タワーから毒電波でセフィーロだったり、
前川清が東京砂漠を唄ったりしている、あの東京である。
そう言えば秋葉原も有るな。鬼門の一種だ。
恐ろしいことである。

東京支社である。
私の勤務する会社は大阪と東京のどちらにも本社を置いていると
豪語して止まない痴れ者であり、正確には私が今勤務している
のが大阪本社で、東京に有るのは東京本社だ。
でも、実際は東京支社だ。見栄という奴かもしれぬ。
勢い、本社から支社へ転勤になるのであるから、これは俗に言う
左遷というものであろう。

左遷。
なんという甘美な響きであろうか。
これで私も晴れてダメ人間の仲間入りなのであろうか。
今まで平凡人を気取っていたが、実のところはダメ人間で
あったのかもしれない。
昼行灯やロクデナシなどと並び称されるダメ人間。
人として生まれたからには、一度はそう呼ばれてみたいものである。
明日になると、私もカレーを食べたり牛丼をツユダクで頼んだり、
お酒を飲んで暴れたり結婚できなかったりするのであろうか。
いや、よく考えてみると、今とそんなに変わらないような気もするな。何故だ。

それにしても左遷の原因は何であろうか。
仕事をせずに雑文を書いたり、会議をサボって雑文を書いたり、
書類の代わりに雑文を書いたり、部長をネタにして雑文を書いたり
していたのがバレたのであろうか。
思い当たることが有り過ぎて、真実はいつもながらに闇の中である。

まあ取りあえず引越しというものをせねばならないらしい。
引越しの何たるかについては浅学にしてよく分かっていないので、
今からドキドキハラハラの一大スペクタクルな経験をすることに
なるかもしれない。
とすればである。
この引越しというもので、しばらくは雑文のネタに困らなくてすみそうである。
来月までにゆっくりと引っ越すわけであるし、それをちまちまと雑文に
仕立ててゆけばよかろう。
ああ。こんな呑気なことを考えていていいのであろうか。
もちろんいいに決まっているである当然。

ということで、雨谷の庵の2000年は引越しからはじまりはじまりである。
乞うご期待という奴である。
いや、あまり期待してもらってもそれはそれで困るのではあるが。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓