雨谷の庵

[0036] 社会人として恥ずべき行為 (1999/12/20)


[Home]
社会人という言葉は何処となく胡散臭い。

「聞いてくれ徳田」

私の数少ない友人である南手某は、私の顔を見るなりそう言ったのである。
何だか怒っているようだ。
よろしい南手某。私も伊達に昼行灯をやっている訳ではない。
ゆっくりと話を聞こうではないか。

「俺はな、旅行にいきたかっただけなんだ」

ほほう。それはよい考えではないか。
旅行というとアレであるな。
温泉で常日頃の疲れを癒し、夜はカラオケや酒盛り、麻雀に興じるという、
楽しげなイベントである。しかも雑文のネタにもなって、一石二鳥だ。
是非行きたまえ。

「だが、俺の上司は駄目だと怒るのだ」

なるほど。それも状況として理解できないことではない。
何せ、年末も近い今日このごろである。
何かと仕事も忙しいであろう。
それに2000年問題の対応で追われている人もちらほら出ている御時世である。
自分の部下が、能天気に温泉にいきたいなどと言ってくれば、上司も
多少はカチンカチンと来ることであろう。

「社会人として、恥ずべき行為だと言うのだ」

え?
温泉に行くことが社会人として恥ずべき行為であると断じられて
しまったのであるか南手よ。
ううむ。それは少々言い過ぎであるようにも思えなくもない。
まあ、貴殿の上司も人の子であろう。
たまに機嫌の悪い時があっても、それは大目に見るべきかもしれぬ。
運が悪かったと思って、諦めよ。南手某。

「おまえ、俺の話を真剣に聞いていないな」

何やら、雰囲気がおかしい。
南手が私の方に怒りの眼差しを向けるではないか。
待て待て南手某。
私は別に真剣でない訳ではないぞ。あまり真剣ではないかもしれないだけだ。
あまり違わないような気もするが、私は気にしていない。
おまえもそうしろ。南手某。

「だいたいおまえは普段からエヘラエヘラと馬鹿面で呑気に昼行灯している上に、
 肝心な時にすら役に立たん。毒にも薬にもならぬ大ウツケだ」

いかん。
事態はますます私の人格を貶める方向に流れていきつつある。
そのうち、金を返せとか鼻くそをほじるなとか、理不尽な難癖をつけ始めるに
違いない。こいつはそういう奴だ。
その前に金はちゃんと返せという向きもあろうが、例によって気にしてはいけない。
とりあえずはここで、何とか事態の収拾を図らねば。
よし南手某。
もう少し詳しく事情を話してみるがよい。

「俺はヒッチハイク旅行をしたかっただけなんだ。それなのにあの馬鹿上司
 の野郎は、社会人として恥ずべき行為だと言いやがった。
 社会人はヒッチハイクをしたらいかんのか。社会人って、それほど
 立派な連中なのか。俺は納得がいかん」

ああヒッチハイクですかそりゃダメっすね。
恥を知れ南手某。
と、いい加減な答えを返したら殴られそうになってしまった。
会社とは恐ろしいところである。みんなも気を付けろ。

雨谷の庵は今日も雨。
< Back |List| Next >
管理者:徳田雨窓