雨谷の庵

[0031] 電話のちょっと変わり者 (1999/12/08)


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昨今は電話を通じて、遠隔会議などもできるようになっていたらしい。

昨日のことである。
私はボイスポイントなる装置を、会議室という場所に設置するはめになった。
このボイスポイントというのが商品名なのか装置の一般名称であるのか
については寡聞にして知識を持っていない。
とりあえず、電話のちょっと変わり者だと思えば良いのだろうか。
個人的には、多分それで合っているように思う。
電話番号を入力する為のプッシュボタンがあるし、音声を拾う為の
マイクも、音声を発する為のスピーカーもついている。
なんとも電話機にそっくりではないか。まさに瓜二つである。
ただ、このボイスポイントなる輩には電話機に特有のあの受話器という
ものが付属していない。
従って受話器を取ることはできない。当たり前であるが。
これを会議室の机の真ん中に設置し、電話線を接続、電源を入れるのである。
これで準備が完了するわけである。
どうであろうか。少しはお解り頂けたであろうか。

要するに電話会議というものである。
それはまさに、遠隔地を電話回線で結び、室内の音声を相互に
やり取りすることで、会議を行おうとする試みに他ならない。
本社と支店を結ぶ場合もあろうし、支社同士でのやり取りに使われることも
当然あるであろうことは想像に難くない。
つまる処、私はその電話会議というものの為の準備をしていたという訳である。

大阪から打合せに参加したのは、私一人。
広々とした会議室に一人で。ぽつねんと椅子にふんぞり返っている私。
冬ももう盛りに来たせいであろうか、何だか背筋の辺りが寒い。
これに対して東京支社の連中は、結構な人数で会議室にたむろしている様子である。
もちろん彼らは声だけである。姿などは見えない。
テレビ電話とかいうケッタイな代物であろうはずも無いので、これは当然であろう。
それにしても、東京側の和気あいあいとした会話を、ぼんやりと聞くというのは、
なんだかちょっといけない感じである。
これだったら寝ていても、バレはしないだろう。実際半分寝てたしな。
机の上に肘を突いて、おおっぴらに鼻くそをほじくっていた処で、
誰かに見咎められるなどということもない。
う〜〜ん。こんな状態だとスリルがなくて、鼻くそほじりもいまひとつ
面白味に欠けているように感じてしまう。
って、会議中にそんな不埒な事をしていたのか。私よ。
しかもそういう問題ではないし。

思うに、こういう一人きりでの電話会議というのもなかなか快適である。
声だけでしか相手の意見を知るすべはないのであるから、当然身振り手振りは
除外される。演出好きで他人の意見を遮ることに生きがいを感じているような
迷惑論客の出る幕などは最初からない。
図面などは予めサーバ上に用意しておき、パソコンの画面で参照すればいい。
表情などによる微妙なニュアンスなど伝わろうはずも無いので、勢い、
言葉を選んで正確な表現を努めようとする。
それになにより、こうやって靴下を脱いで机の上に素足を乗せてくつろいでも、
誰も文句を言わないというのは非常に素晴らしい。
って、会議中にそんな自堕落なことをやっていたのか。私よ。

ああ、これなら今ここで布施明の物真似をしてもきっとバレないんだろうなぁとか、
でも笑いをとる為のお客さんが誰もいないから、あまり意味無いよなぁとか、
そもそもこんな雑文を書いたところで世界の平和には全く寄与しないんだなぁとか、
いつもながらの無意味な妄想にふけっていた時のことであった。

「・・・ということだよ徳田君。頑張ってくれたまえ」
「はい。もちろんです」

いきなり振られた会話に、意味も分からず愛想を振りまいたりしちゃう私。
人としてちょっといけないような気がするのは、気のせいであろうか。
言うまでもなくもちろん気のせいである。気にしてはいけない。君らもそうしろ。
ところで私は何を頑張ればいいのでしょうか部長。教えて下さい。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓