雨谷の庵

[0019] 確か1時ぐらいでお開きに (1999/11/05)


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記憶喪失とかであれば悲劇の主人公であるが、そんな深刻な話ではない。

酔っ払いというのは大変に迷惑千万な輩であり、社会に損害を与えることは
あっても、貢献したりするなどということはまず十中八九、有り得ない。
曰く、お店の看板を不法に持ちかえる。
曰く、お好み焼きを路上に展開する。
曰く、電車内の座席を過剰に占拠する。
曰く、カーネルサンダースに挨拶を強要する。
曰く、ピカチュウの着ぐるみを着たまま商店街を走り回る。
予めお断りしておくが、上記は私の所業ではない。ないってばない。断じて。

さて。
そのような酔っ払いを自らの体でもって顕現させたことのある方なら多かれ少なかれ
身に覚えのあることかと思うのであるが、酔っ払いというものはその発現時の記憶を
保持するのが大変苦手であるようである。である。
斯く言う私も、昨日深夜の記憶が1時間ほど、ない。
確か、友人2人と共にビール缶のプルタブを開けたのが21時過ぎであったと思う。
人間の本質とか深層心理の抑圧が恋愛感情において相手に投影されて云々とかいった、
実に健全な話題で心地よく酔っ払っていたのが、23時頃の状態であったように思う。
で。
次の瞬間の記憶が、朝の10時であるというのはどういうことだ。
アニマとかアニムスの話をしている最中ではなかったのか。
なんで私は寝間着にも着替えずにベッドの上に横たわっているのか。
電気も点けっぱなしではないか。
地球に優しいと自称する方々からのお叱りを受けてしまうではないか。

いてててて。何だこの痛みは。
はうぅ。何故かは分からないが、右足の親指の付け根が大変なことになっている。
何だこの痣は。とんでもなく痛いではないか。
それにしても見事なほどに紫色であるな。ちょっと触って・・・うひゃあ。痛すぎる。

何だか喉も痛いな。とりあえずうがいを・・・・うわぁ。
洗面所がゲロゲロだよどうしてだ。
誰だ私の洗面所にお好み焼きを放置する不遜な輩は。って、私以外にはいないか。
私なんだろうな。覚えてないけど。

それにしても何かやらかしていないかどうか、大変に心配である。
とりあえず財布を無くしている様子はないので安心だ。
何かヘンナモノを持ち帰っていることもない。大丈夫だ。
なんだ。たいした事ないじゃないか。よかったよかった。
めでたしめでたしである。

「昨日さぁ」
昨日一緒に杯を交わしていた友人の1人の弁である。
「あれから大丈夫だった?」
うむ。よい質問であるな。全然オッケーであった。らしい。
「確か1時ぐらいでお開きにしたんだけどね」
え?そうなの?じゃ、私の記憶って、2時間ほど飛んでるんだね。
「え?・・・そうか覚えてないのか」
な、何だその言葉は。
あ、こら目を逸らすんじゃない。なんだ、何があったんだ。
「いや、別に。何もないよ」
ちょっと待て。気になるではないか。
教えなさい。それは君の私に対する義務ではないのか。
一緒に楽しいひとときを過ごした者同志の共感とか、そういうものは君にはないのか。
とかなんとか詰め寄る私であったが、結局真相は闇の中なのであった。

空白の2時間。
できればお返し願いたいものである。我が分身、酔っ払いよ。
切に。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓