雨谷の庵

[0008] 100年後のなんでも鑑定団 (1999/10/07)


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開運なんでも鑑定団という番組がある。
私は好きでよく見ているのであるが、ふとこんなことを考えてしまった。
100年後の、なんでも鑑定団。どんな感じなのだろう。

司会者「では早速見せて頂きましょう・・・?これは何ですか?」
依頼人「ええと、マンガの原稿です」
司会者「この紙切れがぁ?」
鑑定人「あ〜、今でこそマンガやアニメはすべてデジタルデータで作成されていますが、
    ペーパーベースにインクで手描きをしていた時代もあったのですよ」
司会者「へぇぇ。そうでっか。で、貴方はこれを鑑定してくれっちゅうわけですね」
依頼人「はい。これは亡くなった父が大変大事にしていたもので、常々、
    "これは手塚治虫の生原稿でものすごく価値があるのだ"と言っていたものですから」
司会者「て、手塚治虫!あの古典マンガの始祖とかゆぅて、
    教科書に載ってる手塚治虫でっか?」
依頼人「はあ。この原稿に描かれているキャラクター、ああ、この黒マントの男です。
    これが手塚治虫の作品のキャラクターではないかと、父は申しておりました」
司会者「それ、ホンマやったら、えらい貴重な資料でっせ。本人評価額、いくらでっか」
依頼人「ちょっと強気に、100万円でお願いします」

--- 鑑定開始 ---

「奇麗な原稿だね。保存状態もすごくいい」
「ああ、これはブラックジャックですよ。手塚治虫のキャラクターだ」
「でもなんだか、筆線が鋭すぎませんかね」
「??こっちのサインは何だろうね」
「分かりました分かりました。これはアレですよ」
「ああ、そうか」
「そうすると時代的にちょっと・・・」
「いや、これはある意味希少なので・・・」

--- 鑑定終了 ---

司会者「それでは行ってみましょう。古典マンガの始祖、手塚治虫の生原稿。
    オープン・ザ・プライス!」

チロリロリロリィンッ!

司会者「うお!出ましたっ、2300万円!」
観客 「おお〜〜」
司会者「え?何でやねん?こんな紙切れが何でそないに高ぁなるねん」
鑑定人「まず結論から言いますと、これは手塚治虫の作ではありません。
    明らかに贋作です。ポイントはここに描かれているキャラクターです。
    こちらの黒マントのキャラクターは手塚治虫のブラックジャックという
    有名なキャラクターですが、こちらのアンドロイドの女の子はTo Heartという
    ゲームのキャラクターで、手塚治虫とは全く関係ありません。
    To Heartというゲームは手塚治虫の死後に発売されたゲームですので、
    手塚治虫がこの原稿を描いたという可能性は完全に否定できます」
司会者「ニセモノなんですね?」
鑑定人「ええ。ですが、よく聞いて下さい。話はここからです。この原稿の作者ですが、
    隅っこのほうに入れてあるサインから、徳田雨窓のものであるということが
    分かります。徳田雨窓は21世紀の初頭、今から約80年前に活躍したCG作家で、
    現在でも非常に海外での評価が高い作品を残しています。時期的に見て、
    この原稿は彼がまだ無名の同人作家であった頃に描かれたもののようです。
    おそらく20世紀の末に描かれたものでしょう。当時日本では有名作家の作品を
    無名作家がアレンジして自費出版する同人活動と呼ばれるもの盛んだったのですが、
    その類の原稿がこういった完全な形で保存されていることは極めて希なんです」
司会者「せやろなぁ。有名でない奴のものを保存しとこうっちゅう奴ぁ、
    普通おらへんですからね」
鑑定人「徳田雨窓の人気と資料としての希少価値、それにこの原稿の仕上がりの良さと
    保存状態を併せて考えると、2000万円を下ることはないと思います。
    この分野のマニアなら、1億近くの値を付けることも十分に考えられますが、
    私としてはということでこのお値段を提示させて頂きました」

なるほど。そういうことになってしまうかもしれないな。
とか何とか自画自賛の現実逃避をしている場合ではないのであった。
早く、この冬コミ用の原稿を仕上げねば。

雨谷の庵は今日も雨。
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管理者:徳田雨窓